「追跡」(1947):ラオール・ウォルッシュ監督
ポスターはカラフルだが映画はモノクロ作品で有る。
しかし此の作品はモノクロが相応しい。
ジャンルが西部劇"フィルム・ノワール"に入れられているからだ。
そう、勧善懲悪のアクション西部劇は多いが
「大砂塵」と同じ様に中には人間の”業”の様なもの描く西部劇も有るのだ。
それには丁寧に練られた脚本と、その人物を演じられる俳優の演技力も必要だ。
此処ではロバート・ミッチャムとテレサ・ライトが、
その難しい主役の二人を演じる。
難しいというのは此の男女、兄妹の様に育てられながら、
恋に落ちてしまう関係なのだ。
しかも女の兄を殺してしまった男と結婚まで。
映画は「市民ケーン」の様に少年のときの記憶から始まる。
しかし、あまりの恐怖に少年は断片的な事しか思い出せない。
此の男のトラウマの謎解きが、映画を最後まで引っ張る。
そして映像はニューメキシコの巨岩郡を背景に
豆粒ほどの人間を捉え、憎悪に駆られる人間たちは殆ど蟻の様に見える。
その名カメラマンはハリウッドに渡った中国人ジェームス・ウォン・ハウ。
オーソン・ウェルズが使ったパンフォーカス&ワイドレンズを
その10年も前に開発して居た彼はハリウッド撮影部のフロンティア。
手掛けた作品はハワード・ホークスからジョン・フランケンハイマーまで
いずれも映画史に残る作品ばかり。
そんな訳で此の作品、映画を勉強したい学生への
映像、脚本、演出の教材になる位の名画。
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