「折れた槍」(1954)
此の映画、つい最近観た西部劇「草原の野獣」に物語がよく似ている。
昔気質の父親と、その息子達の話だ。
彼方は息子2人だったが此方は息子4人
3人は先妻の子供、末っ子は先住民族とのハーフ。
「燃える平原児」と此のところ続けて先住民族との
ハーフの子供の悲劇の話だけれど。
此れも名優スペンサー・トレイシーが後添えに迎えた
先住民族の妻との間に生まれた息子だけを可愛がった挙句
異母兄弟の軋轢を描いてる。
その異母兄弟の長男が、まだ悪役俳優だった頃の
リチャード・ウイドマーク。
彼が、ずる賢く父親が築いた大牧場を乗っ取ろうとして
末っ子のロバート・ワーグナーを刑務所に入れてしまう。
脚本が捻ってあって、その末っ子が3年の刑期を終えて
出所してくるところから始まる。
父親は既に死んでおり長男は、そのまま金をやるから
他の土地へ行けと。
ここから話は過去に戻り、父親と兄3人の確執に
心を痛める先住民族とのハーフの末っ子が主人公。
結局、父親殺しは兄達の仕業と突き止め
インディアンの仕来り通り墓の前で槍を折って復讐を誓う。
まあ題名の由来は此処から来ている。
監督エドワード・ドミトルクはカナダ生まれながら
ハリウッドで社会派の監督として頭角を表したが
例の赤狩りでハリウッドを追われるも戻って逮捕されたが
その後、転向し生き残って此の様な作品を残した。
西部劇ならではスペクタクルなアクションシーンは流石
でも親族同士の殺し合いは観ていて気持ちの良いものではない。
それは赤狩り時代の自分の裏切りが影響しているのかも知れない。
此の「折れた槍」でスペンサー・トレイシーの先住民の妻を演じているケイティ・フラド。ペキンパーの「ビリーザキッド21歳の生涯」でディランの”天国の扉”の音楽で夫を川辺で見送る妻を演じていた。「真昼の決闘」でゴールデングローブ助演女優賞。「マーロン・ブランドと「片目のジャック」ジョン・ヒューストンの「火山のもとで」とメキシコとハリウッド映画で活躍した大女優。此の映画では先住民役だが、潤んだ大きな瞳が物語の悲劇性を高めている。
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