「ゴングなき戦い」(1972) : ジョン・ヒューストン監督
ジョン・ヒューストン後期の名作として
彼を再びハリウッド映画の表舞台に引き上げたと言われる此の作品。
日本未公開だったのは、主役のステイシー・キーチと
後にブレイクするジェフ・ブリッジスの人気が当時無かったと思われる。
元ボクサーでチャンプの栄光から抜けられない男と
その華やかな存在に憧れる若者の、ふたりの男の生き様が
地味に淡々と描かれる。
此の映画の魅力まずは米国の地方都市の風景を見事に捉えた映像。
そのカメラマンはコンラッド・L・ホール。
「暴力脱獄」「明日に向かって撃て」の名手。
あのエドワード・ホッパーの絵画を連想させる光と影。
その中で実にリアルな演技をする俳優たち
まあステイシーとジェフの演技は実力派だから当然として
それに絡むのが、社会の底辺で身を持ち崩した女
とにかく酒さえ飲めれば誰にでも付いて行く
”アル中”女役のスーザン・テレルが存在感が凄い。
彼女の演技を観るだけでも此の映画の価値が有るくらいだ。
寂れた町同様、男達も貧しく、日雇い労働者生活に行き詰まり
もう一度チャンスを!と再びリングに立つ。
しかしボクサーとしての長いブランクは如何ともし難く
観るものはハラハラしてしまう。
先に出したスターローンとデ・ニーロの「リベンジファイト」の
ご都合主義なボクシング映画とは大違い。
まあ結末は伏せるが・・・流石のジョン・ヒューストン!
アメリカ映画の巨匠なのに英国やフランスの若手監督の様な感性。
此の映画に、老いても盛んな彼の実力を観た。
私の選んだボクシング映画のDVDコレクションに入れねばならぬ。
0 件のコメント:
コメントを投稿