「黄色いリボン」(1949):監督ジョン・フォード
此れと「アパッチ砦」「リオ・グランデ砦」で
ジョン・フォードの騎兵隊三部作と呼ばれている。
主題歌”黄色いリボン”がタイトルになっているが
これも本当は舞台になる「スタアク砦」の題名が相応しいだろう。
その砦の大尉が主役のジョン・ウエイン。
此れに出演した時、彼は、まだ49歳だから
後6日で定年退役となる役にメイクで老けさせている。
(騎兵隊の定年って何歳なんだ?)
しかし先住インディアン達が自分たちの土地を守ろうと
総決起した時期だから、此の砦は風前の灯。
その割には砦の中の緊張感は皆無、
酔っぱらい兵士達の殴り合いや、
兵士たちと隊長の娘の奪い合いを
コメディ・タッチで描いている。
そんな処が、あの黒澤明が憧れた部分だろう。
しかし後6日で退役に、彼は何とか先住民の襲撃を
治めようとするのがクライマックス。
敵地に乗り込み、彼らの馬全部暴走させる夜襲の
光と影の迫力はカメラマンのウイントン・ホークの技。
それだけでは無い、モニュメントバレーの広大な風景を
広角レンズで1画面に収められる才能の素晴らしさは
おそらく其処に行ってみた者にしか判らない筈だ。
これで彼は、その年のアカデミー撮影賞を取っている。
しかし、それを仕込んだのも監督ジョン・フォードの演出。
彼は戦前の1927年にベルリンを訪れドイツの監督
F・W・ムルナウから表現主義の技法を学んでいるからだ。
此の映画には軍隊をホームドラマの様な微笑ましさで描いたのと
モニュメントバレーの下で起こる緊張感のバランスが見事。
ジョン・フォード研究には欠かせない作品だ。
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