2022年1月31日月曜日


「マロナの幻想的な物語り」(2019)

Eテレで2日続けてオンエアした長編アニメ。

此れはルーマニアの監督アンカ・ダミアンの作品

此方も前夜の「ロングウェイノース」同様、

海外で沢山の賞をとっている。

まずシャガールの背景にピカソの人物が動いている!という

前衛的な映像に目眩しされ観る者は中々感情移入し難く

その様式に慣れるまで時間がかかる。

調べたら監督の他に、ブレヒト・エヴァンス、ジナ・トーステンセンと

2人のアニメーターが参加している。

そう此れはJAZZで言うならフリー・ジャズ、

それぞれのアニメーターが自由に描いたものを

監督アンカが主題に向かって構成しているのだ。

それが調和しているとは言い難いが、面白く新しい事は確かだ。

物語は、いい加減な邦題とは違い、決して幻想的でなく

捨て犬が3人の飼い主に次々と拾われて

それなりの人生ならぬ犬生を終える悲惨な話だ。

実写でやれば忠犬ハチ公のような感動的なドラマになった筈だが

此の監督は、それを嫌い

新しいアニメーションの実験を試みた様だ。

此の犬が飼われる3人の飼い主に

曲芸師、ゴミの集配人、叔父と母と暮らす少女。

それらは犬の目から見た人間たちの暮らしとして描かれる。

此の犬は実にストイックで、自分の幸せというものを

母犬から離された時から期待していない。

その犬の眼差しが、実に人間そのものを鋭く観察していて

カラフルな映像とは裏腹に、ラストには無常感すら漂い、

此の作品を崇高なレベルに引き上げている。

犬好きな人はこの犬、愛おしくて堪らないだろう。


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