「マロナの幻想的な物語り」(2019)
Eテレで2日続けてオンエアした長編アニメ。
此れはルーマニアの監督アンカ・ダミアンの作品
此方も前夜の「ロングウェイノース」同様、
海外で沢山の賞をとっている。
まずシャガールの背景にピカソの人物が動いている!という
前衛的な映像に目眩しされ観る者は中々感情移入し難く
その様式に慣れるまで時間がかかる。
調べたら監督の他に、ブレヒト・エヴァンス、ジナ・トーステンセンと
2人のアニメーターが参加している。
そう此れはJAZZで言うならフリー・ジャズ、
それぞれのアニメーターが自由に描いたものを
監督アンカが主題に向かって構成しているのだ。
それが調和しているとは言い難いが、面白く新しい事は確かだ。
物語は、いい加減な邦題とは違い、決して幻想的でなく
捨て犬が3人の飼い主に次々と拾われて
それなりの人生ならぬ”犬生”を終える悲惨な話だ。
実写でやれば”忠犬ハチ公”のような感動的なドラマになった筈だが
此の監督は、それを嫌い
新しいアニメーションの実験を試みた様だ。
此の犬が飼われる3人の飼い主に
曲芸師、ゴミの集配人、叔父と母と暮らす少女。
それらは犬の目から見た人間たちの暮らしとして描かれる。
此の犬は実にストイックで、自分の幸せというものを
母犬から離された時から期待していない。
その犬の眼差しが、実に人間そのものを鋭く観察していて
カラフルな映像とは裏腹に、ラストには無常感すら漂い、
此の作品を崇高なレベルに引き上げている。
犬好きな人はこの犬、愛おしくて堪らないだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿