「黄昏」(1952):ウィリアム・ワイラー監督作品
彼がオードリー・ヘプバーンで「ローマの休日」の
1年前に作った映画である。
だから楽しいラブ・コメディ映画と思いきや、とんでもない中年男が若い娘に夢中になり上流階級の妻も家庭も捨てて堕ちて行く話である。
此の高級レストランの支配人役を英国の名優ローレンスオリビエが演じる。品格といいい申し分ない押出しである。
相手役の下層階級の娘はジェニファー・ジョーンズ。
美しいばかりで無く、デビュー作「聖処女」でいきなりオスカー主演女優賞を取った演技派である。
此の二人が、お互いに相手が居ながら、深みにハマって行くのである。
それは丸で近松の世話物「冥途の飛脚」の様であり”封印破り”まで付いている。
しかし娘は遊女では無く、田舎から出て来て遊び男と同棲中。
その娘に惹かれた中年男はレストランのオーナーの金庫に大金を見つけ
鍵をかける前に偶然その金庫が閉まってしまう。
この辺りが歌舞伎の所作の様な手振り身振りのオリビエの演技が素晴らしい、いやウィリアム・ワイラーの演出か?
とにかく、それから先は近松の”道行”ならぬ男女の逃避行。
身知らぬ街に着いたものの、追っ手に大金も巻き上げられ
お互い”本当の愛”だけを信じて暮らすが、有り金も底をつき
レストランに勤めるも、元の店から回状は回っていて
クビになり、女は流産までしてしまう。
ところが娘は持ち前の美貌で女優として舞台に立ち成功。
男は何の職にも付けず、彼の息子が金持ち令嬢と結婚して
彼らの街に来ると言うので、彼が会いに行くのを機に
女は身を引いて消えてしまう。
まあ、すれ違いはメロドラマの常套手段だ。
それから何年、落ちぶれた男は汚い木賃宿からも追い出され
大女優に成った彼女を楽屋口で待ち構える・・・と。
全てにシナリオの面白さ、いや惨めな話で切ないが
俳優の演技力の確かさ。
そしてカメラワークの巧さ。
「大いなる西部」「ベン・ハー」「コレクター」と傑作を生み出した
ハリウッドを代表する大巨匠の知られざる名画には感服。
いや知らなかったのは私だけか?

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