"くさやの思い出”
新宿の東口の端の方に、かなり昔だが
「五十鈴」という名前の居酒屋が在った。
明け方まで商売して居てゴールデン街からの飲み仲間と
終着駅の様に寄って居た。
お握りが大きく美味しいと評判で、コンビニなど無い時代だから、
新宿から登山に行く者たちが弁当として仕入れていた。
”五十鈴”とは良く名前をつけたもので全員50過ぎの梅干しババアばかり、
何を頼んでもハイハイと返事ばかりで出てくるのが遅くてまいった。
もっと参ったのは”くさや”。
メニューにあるから誰かがそれを頼んだが最後、
店中に焼く臭いが充満し臭いのなんの。
そうなったらコチラも食べるしかないから、頼む。
そうすると益々店は、くさやの臭いだらけになり、
此処は馬小屋か?肥溜めか?状態。
それでも店のメニューから外れないのは
「実はアタシ、くさや大好きなのよ、ちょっと頂戴!」と
小娘の様な可愛い表情で手を伸ばす婆さん。
あの頃、彼女達は50過ぎの菅井きんか浦辺粂子だから
今は、おそらく誰も生きてはいまい・・・合掌。
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