2020年5月29日金曜日

「遥か群衆を離れて」(1967)
此の作品の監督ジョン・シュレジンジャーは
私の好きな映画「イナグの日」を撮っている。
原作はポランスキーの「テス」と同じトーマス・ハーディー。
英国自然主義文学の香り高い小説は
シュレジンガーの演出と
後に監督となるニコラス・ローグのカメラワークで
その当時の都市や田園を見事に映像化されている。
そこで思い出されたのは此れの11年後に作られた
テレンス・マリックの名作「天国の日々」(1978)
それには映像的に様々な共通点が窺えるが
此の映画の主題は、一人の美しい女(ジュリー・クリスティ)を
巡る三人の男の愛憎のドラマだ。
最初に彼女に求愛をした男(アラン・ベイツ)は
貴方に愛を感じないと簡単に拒絶され。
その後、土地を離れた男は偶然、彼女と再会
彼女の牧場で働くことに。
彼女の戯れから求愛された二番目の男(ピーター・フィンチ)は
隣の牧場主だが、本気になって翻弄されたまま。
結局、三番目に現れた格好は良いが素行の悪い兵士(テレンス・タンプ)と
結婚するも、そこへ男の子供を身ごもっていた娘が現れ
男は、それを悔いて海へ身を投げる。
傷心の彼女に隣の牧場主が再び結婚を迫り
婚約披露の豪華なパーティーを開くが
そこへ死んだ筈の兵士が登場、
逆上した牧場主は兵士を射殺する。
全てを失った彼女は、やっと自分の身近に
無償の愛を捧げていた男が居たのに気づく・・・という
何とも古めかしい話。
それでも流石、此の2年後「真夜中のカウボーイ」で
アカデミー賞を取る監督だけあって
当時”旬”の俳優たち名女優ジュリー・クリスティに
アラン・ベイツ、ピーター・フィンチ、テレンスタンプと
何れも癖のある役者を現代にも通じるモダンな演出をしている。
それにしても見応えあるのは
ブリューゲルの絵に出てくるような牧童たちや
ビクトリア朝の上流階級のコスチューム。
そして当時のサーカスの時代考証の面白さには
あのテレンス・マリックも「天国・・・」に此の映画のイメージが
有ったに違いないと確信する。














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