2018年12月31日月曜日

「黄金のアデーレ名画の返還」 (2015)
今やイギリスを代表する名女優ヘレン・ミレンの映画だが
見逃していたのをやっと観た。
タイトルの”黄金のアデーレ”はウィーン派の鬼才画家
グスタフ・クリムトの有名な絵画。
此れを第二次世界大戦中ナチスに奪われたユダヤ女性が
亡命して以来住む米国からオーストリア政府を相手に
その返還を求める訴訟を起こす。
甥の若い弁護士を使って、二度と戻りたく無い
悪夢の記憶の祖国オーストリアまで乗り込み
勝ち目の無い裁判に挑む。
若い弁護士は自分がユダヤ人であると云う自覚も無く
只此の絵画に途轍も無い値段が付いているだけで
叔母の頼みを引き受けたのだ。
しかもモノは世界的な名画、オーストリアが手放す訳が無く
一度目は、見事に敗訴する。
しかし、その結果に彼の中に”何か”が目覚め
叔母以上に此の訴訟の勝利に固執し再度挑戦する。
此の甥を演じる俳優は無名だが中々の名演。
映画はその裁判と平行して、主人公の娘時代の記憶を
フラシュバックさせる構成。
それがドイツがオーストリアに侵攻した時代の悲惨さを暴きだす。
そう此の映画の主題は名画の返還では無くて
当時の彼女の両親との切ない別れや、国を脱出する迄の緊張感で
ナチスという理不尽な政党の恐怖を描いているのだ。
ネタバレになるが
結局、此の名画は現在ニューヨークの美術館に在り
彼女は勝利した訳であるが
それでも当時、そうせざる得なかったとはいえ
両親を置いて国を捨てた彼女の後悔が
ヘレン・ミレンの深い演技で観る者の心に重く伝わる。
それにしても此の女優、私が最初に観たのは、あの「カリギュラ」
年を重ねる程に演技に磨きがかかっている様に思える。






0 件のコメント:

コメントを投稿