2016年11月12日土曜日

BROW-UP(欲望)1967
此の映画の題名は、どう考えても内容に合っていない。
原題通り「ブロウ・アップ=引き伸ばし」と、すべきだろう。
話は”スインギング・ロンドン”と呼ばれる
1960年代のロンドンを舞台に、
華やかなファッション・カメラマンを主人公にした
ミステリーいやミステリー仕立ての不条理劇。
しかし当時、作風は難解ながらも鬼才と云われ
世界の映画祭の賞を総なめにしていた
監督ミケランジェロ・アントニオーニが
母国イタリアを離れ外国で撮った最初の作品だ。
オープニング、ハービー・ハンコックのジャズをバックに
緑の芝生をマスクで抜いたタイトル文字がモダンだ。
此の美しい緑の芝生こそ、此の映画全体を覆う背景。
たまたま来た、その緑の公園で
中年カップルの逢瀬を、スナップした主人公は
そのカップルの女性に気付かれ、ネガをよこせと詰め寄られる。
しかしカメラマンとして被写体に何か?を
感じた主人公はネガを渡さない。
すったもんだの間に相手の男が消えてしまう。
カメラマンが自分のアトリエに戻った処に再び公園の女が現れ
執拗にネガを要求する。
カメラマンは女に身体と引き換えに渡すと嘘を付き、交情する。
しかし、そのネガは偽物で果たして本当のネガを現像
引き伸ばし(BROW-UP)てみれば
何やら公園の茂みから銃口が、そして更に草むらには
倒れた男らしきものが映っていた。
気になった主人公は、その夜、現場の公園に戻ると
やはり男の死体。
その事実を話しても誰も信じないどころか
証拠の写真は何ものかに依ってアトリエからも消えて居た。
これだけでは、単なるミステリーだが
再々度,現場に戻っても男の死体は影も無く消えて居て
主人公は果たして、その殺人は本当に在ったものか疑いだす。
それまでの作品「さすらい」「情事」「赤い砂漠」等で
現代の男女の”愛の不毛”を追求して来たアントニオーニが
更に人間の記憶の曖昧さに踏み込んだ”妄想”を描いている。
しかし、それだけではなく
当時のロンドンのポップでモダンな風俗とロック音楽を通して
時代そのものも描いている。
特に”ヤードバーズ”の壊れたギターに夢中になる観衆や
テニスコートでパントマイムで演じられる試合などに
巻き込まれた主人公は
虚と実の曖昧さに揺さぶりをかけられる。

”スインギング・ロンドン”を代表する映画として
未だに高い評価を得ている此の作品。
ミーハー的に観れば先のヤードバーズは
ジミー・ペイジとジェフ・ベックのツイン・リード・ギター。
売れなくてフランスに渡る前の女優ジェーン・バーキンの
可哀想な姿が映っている。
それにしてもロールスロイスに乗り、トップ・モデルに股がる
此の主人公カメラマンの格好良さに憧れ、
その道に入った人も多かろう(笑)

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