TV版「男はつらいよ」初回と最終回
先日BSで、やっていたTV版の「男はつらいよ」
途中で脚本の山田洋次と妹さくら役の長山藍子の
対談を挟み、オンエアされた此れには、ヤラれた。
此れをリアル・タイムで放映していた頃は
私も一番仕事が忙しく、全部観ていた訳では無いが
寅さんがマドンナの佐藤オリエに振られ
(TV版だから最初の失恋と云う事になる)
とら屋の2階で夕陽を背に、さめざめと泣く場面に
♪忘れられないわ〜あの人が好きよ〜と
ピンキーとキラーズの「恋の季節」のBGMが・・・。
改めて初回と最終回を観ると脚本の山田が仕掛けた
寅さんというキャラクターは当時の社会でも
生きているのが難しい存在であった事が解る。
初回で、さくらと付き合っていたエリート社員の婚約者が
寅さんの出現に、さくらから離れて行き
最終回では、人の良さそうな井川比佐志に代わっていた。
マドンナの佐藤オリエも、寅さんが自分に惚れているのを
知りながら別の相手を選んでいた。
寅さんは”アウトロー=はみ出し者”なのだ。
だから山田洋次は最終回に寅さんを
奄美大島のハブに噛まれて殺させたと。
そうなのだ、愛すべきキャラクターだが
側に居ては迷惑な人間、現代には生き残れない人間なのだと。
それは車寅次郎というキャラクターを生んだ
山田洋次本人が一番解っていた。
古くは岩下俊作の「無法松の一生」の車夫・富岡松五郎の
片岡未亡人への慕情にシチュエーションを貰い。
自分も藤原審彌の「庭にひともと白木蓮」を元に、ハナ肇の
「馬鹿シリーズ」で作ったキャラを寅さんへと発展させた。
それにしても「お兄ちゃんが死んだ事を受け止められない」と
涙ぐむ初代さくら役の長山藍子の想いに、
最終回、幽霊になって答える寅さんには又泣けた。
森川信のオイちゃんと杉山とく子のオバちゃんの
此の茶の間の風景はモノクロだから
映画よりも昭和の温もりを感じさせる。
そして初代マドンナの父親、英語の先生役
東野英治郎の芝居に舌を巻いた、凄い役者だったな。
TVで、さくら役の長山藍子は「男はつらいよ」シリーズ中
名作と言われる5作目「望郷篇」でマドンナに起用され
(山田は、さくら役を取り上げた事の借りを返したかったか?)
同じくTVのオバちゃんだった杉山とく子と豆腐屋の母子を演じさせ
"油と汗まみれに成って働く!”と豆腐屋で油揚げを作る寅
(実はマドンナ長山藍子に夢中で居候)を杉山とく子が
「あの人、何処かの御曹司じゃないかね?」と云うのを聞いて
寅が「僕、寝ます!」と急に上品に成り
2階に、すまして上がるのが、やたら面白かった。
映画の「寅さん」シリーズは毎年盆と正月に封切られたが
此のTV版もDVDに焼いて同じ様に繰り返し観てみたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿