鴛鴦(おしどり)歌合戦(1939)
TSUTAYAに此のDVDが出ていた。
マキノ正博のオペレッタ時代劇の傑作として伝説の映画だ。
何より、あの志村喬が片岡千恵蔵よりも出番が多く
競演したデック・ミネが、彼に歌手に成るのを薦めたという
リズム感の良い、音程のしっかりした歌は本物だった。
それにしても戦前の昭和14年に、背景に白い雲が流れる
大掛かりな時代劇オープンセットを作り
エキストラをフレームの奥まで仕込んで踊らせた此の映画
ジョン・ランディスの映画「ブルース・ブラザース」で
シカゴの街中が踊る場面の元ネタだったのでは
ないかと思ってしまう。
時代劇の扮装で全員が歌いスイングする場面は
なんとも可笑しくて楽しい。
それを見事に画面に納めているのが
あの溝口健二、黒澤明、市川崑の作品を撮った
日本映画屈指の名カメラマン・宮川一夫。
まさか彼が撮影をしているとは知らなんだ。
歌い踊るモブ・シーンをしっかり画面に納め
オープンの光と影を昼と夜の時間経過に使い
何より下の画面にも映っているが
白黒画面なのに日傘や着物がカラフルに感じられるのが凄い。
見えない筈の色彩が画面で躍動しているのだ。
監督・マキノ正博は日本映画の”祖”と呼ばれた人。
決して芸術映画ではないが
誰もやっていない娯楽映画を作り続け
若い時、自ら俳優だった経験を生かし細かい演技指導で
東映ヤクザ映画の高倉健、藤純子を育てあげた。
彼の著書「マキノ雅弘自伝・映画渡世 天の巻・地の巻」で
”映画はスジ(脚本)、ヌケ(映像)ドウサ(演技)”と
云い切った彼の映画論は今でも的(マト)を得ている名言だ。
此のダイナミックなフィナーレを観ずして日本映画は語れない。
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