2015年4月16日木曜日

世界のミフネ・三船敏郎
今回,彼を取り上げるにあたって色々調べたら
黒澤明作品(白)の出演は確かに素晴らしいが
それは彼の全てでは無く
上のジャケット背表紙で色分けしたが
日本映画の黄金時代の名作(黒)
「西鶴一代女」「無法松の一生」等にも数多く出演ている事や
海外の大作(黄)「グランプリ」「レッドサン」に
国際俳優として魁(さきがけ)となっていた事に気付いた。
それなのに彼個人の評価が一般的に低いのは
プライベートの女性問題や晩年、痴呆症を患ってからの
惨めな生活が、当時の週刊誌の絶好の餌にさせられたからである。
まったく彼の演じた役そのままの単純で無骨な性格は
それを利用しようとした人々に、いい様にされ続けた。
それでも太平洋戦争で世界から嫌われた日本人が
海外で評価されたのは彼の演じた”キャラクター”が
日本人の代表として好まれ再評価されたからである。
当人もそれを意識して、出演した海外作品で
日本の間違った文化を正そうと現場で努力していた。
「グランプリ」や「レッドサン」の美術や時代考証に
無理が無いのは、その成果である。
彼の出演した全作品を改めて観てみると
「隠し砦の三悪人」「用心棒」「椿三十郎」と
時代劇での殺陣はカメラも追いきれないスピード
誰も真似の出来ない身体能力であったという。
そして「七人の侍」「無法松の一生」に見える
独特な”人なつこさ”は正に彼の人柄そのものと云える。
それは彼を未だに兄や父の様に慕う
後輩や裏方の職人たちの想い出話に窺える。
勿論,彼が生涯に得たヴェニス映画祭や
アカデミー外国賞のトロフィーそして様々な栄誉は
同じ日本人として誇るべきものだが
現代映画がC.G.等でスペクタクル化している中
彼の出演作品には人の温もりが息づいている
そこに”人間”が確かに生きているのだ。
此れから先も語り継ぐべきは映画史での彼の存在
”世界のミフネ”として遺作の「深い河」まで
彼が命をかけて築いた
巨大な”金字塔”と云うべきものだろう。

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