2013年12月2日月曜日

「シャーロック・ホームズの冒険」
此のサイトで以前、「シャーロック」という
現代のホームズを描いたTVドラマを取り上げたが
此れはコナン・ドイルの原作を極めて忠実に映像化したTVシリーズ。
昔、オンエアしていたものを
デジタル・リマスターして再放送している。
しかし、元がフィルムで撮られているから
画像は鮮明とは言い難いが、それが又、当時の時代考証
建物、部屋、小道具、衣装をリアルに再現するに都合良く
その完璧さにドラマを観ているというより
イギリスはロンドンの美術館や考古博物館に
行っている様な気分にさせられる。
例えばオープニングだが
有名なベーカー街の情景が大ロングで映され、
街角に屯する裸足の浮浪児(オリバー・ツイストの様)や
行き交う馬車に人々が、まず丁寧に描かれ
それをカメラがトラック・バックすると
上の写真、ホームズの横顔が出て来ると云った具合。
今ならC.Gで簡単に合成出来るだろうが
1985年に作られた頃は巨額の費用と手間をかけた事だろう。
しかし、現代の合成技術でも出来ないのが
俳優達の顔、キャスティングだ。
上の写真のホームズ役ジェレミー・ブレット
彼の顔は普通ではない。
原作のコカイン中毒という設定そのままに
青白く、鋭い眼差しは探偵で無ければ犯罪者としか思えない
まさに、はまり役。
ハリウッドには居ない英国人独特の風貌だ。
吹き替えをしている露口茂の神経質そうな声もピッタリ。
名コンビの相棒のワトソン君は私のイメージより
老けているが、それでも人の良い軍医あがりに
違和感は無い。
コチラの声はもう亡くなっている長門裕之
そう、吹き替えをしている声優も今は居ない人が多く
あっ誰の声だ!と当てるのも楽しみの1つ。
余談だが昔仕事でロンドンにロケをした時
セット・デザイナーが面白い物を見せてやると
郊外の大きなスタジオに連れて行ってくれた。
それはスピルズバーグがバリー・レヴィンソンに撮らせた
「ヤング・シャーロック・ホームズ」(1985年)の
オープンセットだった。
実物大のベーカー街だけでなく家の中まで作りこんだ
スケールに圧倒されたが
私が「此れならロンドンの建物は全部そのまま残って居るから
セットにしなくても?」と云ったら
「此れに大雪を降らし馬車を走らすからセットでしか出来ない」と。
まあ、そんな話は、どうでも良いが
最近、オンエアされた第9話「ギリシャ語通訳」では
冒頭のギリシャ人が誘拐される場面に帆船が何艘も浮かぶ
巨大な港のオープン・セットが使われていた。
当時の照明設備そのままの街頭の灯りも見事。
そして通訳が連れ込まれた屋敷の内部など
丁寧な美術はビクトリア王朝時代と思われる
家具の1つ1つ骨董マニアなら涎が出そう。
そして、それを映し出す照明の自然さ美しさ。
レンブラントの絵画やターナーの風景画と云えば
解ってもらえると思う。
もう一つのTVシリーズ「名探偵ポアロ」もそうだが
ハリウッドには真似の出来ない英国映画の実力というものを感じる。
そして物語も決して只のハッピーエンドには
終わらない英国人独特の”暗さ”というか”陰”が
登場人物すべてに感じられ
伝統の裏に隠されたイギリスの階級制度の闇の様なものが
此の物語を包んでいる様に思える。
全部で40話、観てない人に、お勧め。


1 件のコメント:

  1. 以前見落とした回を見る良い機会と、楽しんでます。ホームズはこの時のが一番いいね。
    最近始まった「ワンス・アポン・ア・タイム」も面白いね。

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