2013年10月5日土曜日

フィクサー(2007)
だいたい監督に成るには助監督時代、脚本に参加して
その師匠の監督に認められて初めて監督デビューをするが
海外の場合、子弟制度が無いので、脚本家で名を挙げた後
監督デビューをする事が多いようだ。
此の「フィクサー」の監督トニー・ギルロイは、此処でも取り上げた
キャシー・ベイツの主演の「黙秘」の脚本家と云うより
マット・デーモン主演の大ヒット・アクション・シリーズ
「ボーン・アイデンティティー」の脚本で有名な人だ。
とにかく巧みな構成で、冒頭から観客の心を掴むのが得意。
それが此の映画では、少し捻(ヒネ)った構成をしている。
まず自分の脚本を分解して
主役の”マイケル・クレイトン”こと
ジョージ・クルーニーが登場する前に
登場する人物、それぞれのエピソードを積み重ね
中々本題へ辿り着かせない。
でも物語は実に簡単、N.Yの法律事務所が扱う
大手農薬関連企業の集団訴訟を巡ってのミステリー。
同僚の弁護士が、その企業の不正の証拠を
握った為に消されてしまったのを怒った
ジョージ・クルーニーが単身、大企業相手に戦いを挑む話だ。
彼は”フィクサー”と呼ばれる”揉み消し屋”。
此の男をクルーニーがチャンドラーの
フィリップ・マーロウの様に人間臭く渋く演じる。
離婚して、離れて暮らす男の子の面倒を時々みながら
子供に”男とは何か?”を教育しながら事件を追う姿が微笑ましい。
そしてクライアント大手農薬関連企業のボスから
此の事件担当に任命された女性本部長を
「ナルニア国物語」の白い魔女ことティルダ・スウィントンが演じ
(此の演技で2007年アカデミー助演女優賞)
その繊細でヒステリックな演技が此の映画に
リアリティを持たせ、最後のクルーニーとの対決に
強い緊張感を生む。
監督ギルロイは脚本家ながら
此の作品では言葉に成らない映像にこだわり
N.Yの大都会のビルの内外を無機的に捉え、
現代社会構造を浮き上がらせたと思えば、
ロシアの監督タルコフスキーばりに謎めかせて
(製作総指揮に参加している、S・ソーダバーグの影響か?)
霧深い田園風景を切り取り、子供の絵本に出て来る風景に
多重な意味を持たせて巧みだ。
此の作品の後、もう一度
ラッセル・クロウに「消されたヘッドライン」の脚本を書き
今度はオリジナル・シナリオで”ボーン”シリーズの続き
「ボーン・レガシー」を監督しているので
是非観てみたい。

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