(日本映画・男優編)
山形勲(1915~1996)
此の俳優も、やはり東映時代劇の悪役で子供の頃
主人公をやたら虐めるので憎らしい奴と思っていた1人だが
高校生の頃観た、中村登監督の「二十一歳の父」(1964)という作品で
息子に自殺される父親役の哀しみを彼が見事に演じたのを観てから
俳優いや名優と云うものの存在を初めて知ったものだ。
今回、あれこれ彼を調べてみたら意外な事実が解った。
まず生まれがイギリスはロンドンとあり、彼の顔は
とても英国人には見えないから何故?と又しつこく追ったら
彼の父親は山形巌というサーカスの軽業師
日本の大正時代、ヨーロッパ巡業に加わり、そのままイギリスに居残り
ロンドンで暮らす様になったという。恐らく此の時,生まれた6人の子供の1人が山形勲なのだろう。
そして第一次世界大戦でサーカス興行が出来なく成り
日本に帰国後、麻布に洋風の”山形ホテル”を建てたという。
考えるにイギリス時代,芸人として,それ也の財産を蓄えたのだろう。
その頃、日本には帝国ホテルや東京ステーション・ホテル位しか
洋風ホテルは無かったので結構、そのホテルは外人相手に繁盛したらしい。
此の辺りは、やはり洋行帰りの永井荷風の「断腸亭日乗」に書かれているとか。
話を山形勲に戻すが
とにかく善悪両方を演じても滲み出る此の俳優の品格は
その生い立ちに有ったのか?と納得出来る。
そして彼の作品歴を辿ると更に驚くのは
東映時代劇だけでなく、日本映画の名作に数多く出演している事。
その中でも「地獄門」「七人の侍」「裸の太陽」「上意討ち」と
米国アカデミー賞から世界三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)の賞を
総て採った作品に出演していた4冠王で有る事、
つまり日本映画の黄金期の巨匠達
衣笠貞之助、黒澤明、家城巳代治、小林正樹の
期待に応えた演技の出来る凄い俳優であったのだ。
海外で今でも人気の有る
監督・成瀬巳喜男の「浮雲」での彼の役は、
新興宗教の教祖様、また高峰秀子の義理の兄でもあるのだが
高峰を妾にしているという凄まじいもので有った。
それを彼が戦後のドサクサの中で生きる為には何でもするという
人間味たっぷりなキャラクターで演じていたのも忘れられない。
”知るを楽しむ”又は”目からウロコ”
此のシリーズで今回の山形勲の追跡には、本当に、それを感じた。


山形ホテルに通う永井荷風を見掛けた幼い山形勲の話も興味深いよね。
返信削除中村登の名作「二十一歳の父」での演技は
返信削除確かブルーリボン男優助演賞を
取ったはずだが・・・。
でも、もっと評価されて良い俳優だと思う。
それにしても悪役が多かったねえ。