2012年12月29日土曜日

(日本映画・男優編
左卜全(1894〜1971)
此の人を私は見かけた事がある、それは中学1年生。
稲垣浩監督の三船敏郎の方ではない
三国連太郎主演の映画「無法松の一生」で
九州小倉に見立てた蔵の町・栃木ロケで撮影の合間か、
彼は、うずま川の畔をふらふらしていた。
鼻歌を歌っていて、それは正に”左卜全”そのものだった。
彼が亡くなった後、発売された
彼の妻・三ヶ島糸さんの著書「奇人でけっこう」には
彼の人格は演じた役柄そのものの
幼い時から凄まじい苦労をした人生から滲み出たもの。
その喜びも哀しみも、すべて受け入れた
穏やかな表情は、それが役か地か判らないという。
そこが黒澤明を始めとした
名監督達に彼が愛された理由だろう。
晩年「老人と子供のポルカ」という曲を歌い
40万枚を売り上げるヒットとなったが
20万円の買取り契約のため、印税は入らなかったという。
亡くなった77歳は今の平均年齢から云えば早い方だ。
先に記した女優の北林谷栄と同じで、生まれたときから
老人だった様な印象で最初から最後まで”左卜全”を演じた。
日本映画史には欠くべからざる脇役俳優と云えるだろう。

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