2012年9月18日火曜日


”Cassandras Dream”

ウディ・アレンの夢と犯罪 

ニューヨークのマッハッタンを物語の舞台とする事が多かった彼が
イギリスのロンドンに話を移して作った
「マッチ・ポイント」「タロットカード殺人事件」と此の作品は
”ロンドン3部作”と呼ばれる。
此れ以降、自分は出演せず、脚本・監督にまわった
彼の記念的な作品でもある。
イギリスからハリウッドに招かれ「スター・ウォーズ」で
一躍人気俳優に成ったユアン・マクレガーに
アイルランド出身ながら「アレキサンダー」で
主役を張ったコリン・ファレルの
2大スターを兄弟役に見事なサスペンス映画を作り上げた。
此処ではウディ得意の皮肉やユーモアは鳴りを潜め

シリアスなホーム・ドラマ仕立てで
現代のイギリスの家族や兄弟の夢と挫折を描いているのだ。
此の監督には「カメレオンマン」という傑作が有るが
彼自身”カメレオン”の様に演出スタイルまで変えている。
確かに既に50本を越える作品を監督していたら
そうでもしないと飽きてしまうに違いない。
それにしても、ずっと保ち続けている、
彼の演出レベルの高さに驚かされる。
例えば此の作品を新しい監督が作っていたら
凄い新人が出て来たと賞賛されるだろう。
話を此の映画の中身に戻すと
映画の原題は”カサンドラの夢” 、此の名前のヨットを
仲の良い兄弟が博打で儲けた金で購入した処から話は始まる。
その船の名は、実はギリシャ神話で”不幸の予言者”であって
それ以降、不運が続き、兄弟の”労働者階級から
何とか抜け出したい!”という夢は悉く裏目に出る。
そこに家族や親戚の問題が絡み、兄弟は
          成り行きで犯罪に手を染める事になる。
そこまでの伏線の張り方がサスペンス映画として巧みだ。
いつから此の監督はヒッチコックみたいな技を覚えたのだろう。
とにかく観客は此の等身大の兄弟に感情移入をさせられてしまい
自分が犯罪現場に居るような錯覚すら覚え緊張する。
そして完全犯罪は成功したかの様に思えたが・・・
ラスト、兄弟は一緒にヨットに乗り、海に出て
結局、”カサンドラの夢”と成ってしまうのだ。
取り立てて奇をてらった映像では無いが、
ベテランらしい手堅い演出でストーリーは
スムーズに運び、テンポは弛まず、一気に意外な結末と成る。
その流れを作っているのが現代音楽の作曲家フィリップ・グラス。
ミニマム・ミュージック独特の緊張感を解き放つ様な叙情性が
此の古典的な罪と罰の物語に現代的な感覚を持たせている。

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