先の「斬る」「剣」と並び、三隅研次の”剣”三部作と言われる。
原作が眠狂四郎シリーズの柴田錬三郎だから話は奇想天外である。
噂では藩の中老の母と犬と人獣交配から生まれた”犬っ子”と疎まれながら
主人公は、天性の花を育てる才能と居合い抜きの達人に育ち
藩の次代家老の抗争に巻き込まれ”人斬り”になって行く。
その”居合い抜き”を教えたのは藩に潜入した幕府の御庭番。
その役を日本映画の影の名脇役・内田朝雄が演じる。
狸の様な鋭い目を持つ此の俳優はヤクザ映画には欠かせない
悪役や親分を演じ役以上の人間味を出し監督に重宝された。
此の作品でも市川雷蔵の剣を開眼させる重要な役。
その太刀さばきを彼は何時何処で会得したものだろう。
それはともかく此の映画で市川雷蔵が演じた主人公の
アクションは無茶苦茶ハードだ。
疾走する馬を、走って追い抜き、追い越しざまに
乗っている相手を斬り殺すと言うアスリートでも出来ない演技。
映画だから多少の映像技術を使っているが、それでも
不自然で無いのは市川雷蔵の体力だろう。
その後も自分で育てた花が咲き誇る谷で約50人位を相手の立ち回り、
スタンドイン無しでフルサイズの殺陣は観ている此方が疲れてしまう。
此の時、市川雷蔵は34歳。
男盛りとは言え並のアクション・スターに出来る事では無い。
ふと思い出したのは丹波哲郎がイタリアに呼ばれて
マカロニウエスタンの「5人の軍隊」で落ちた汽車を追いかけ
山越え谷越え走って追い付く場面。
市川雷蔵と言えば勝新太郎に比べ、ひ弱なイメージが強いが
此の映画を観る限りタフな役者だったんだなと。
監督・三隅研次の”剣”三部作。
牧浦地志の斬新なカメラワークで見事に完結している。
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