2024年9月17日火曜日

サンダカン八番娼館 望郷(1974):熊井啓監督作品
公開当時私は観ていたがBS放映で再び。
出演している俳優たちが殆ど亡くなっているので、
嗚呼こんな上手い人たちが昔は居たなと感慨。
その中でも主演の田中絹代は此の作品で
ベルリン映画祭で女優賞(金熊賞)を取っている。
サイレントからトーキーへ日本映画の歴史の様な存在の彼女は
鼻にかかった独特の節回しで、
上手い下手を通り越し、その存在感は当に日本女性そのもの。
”からゆきさん”と呼ばれた外国へ出向いた娼婦たちを
描いた山崎朋子の原作を映画化したのが此の作品。
その娘時代の役を演じた高橋洋子も良かったが
晩年の田中絹代がやはり素晴らしい。
何処となく二人が自然に似て見えたのは
監督熊井啓のキャスティングの巧さか?演出か?
ラスト近く栗原小巻演ずる山崎朋子が
娼婦の取材に来ているのがバレて村人からの嫌がらせに
東京へ戻ると告げた時、田中絹代は少女の様に声を出して泣くのが
何とも切く悲しかった。
そして映画の途中で気になったサンダカン八番娼館を
仕切る女主人役の女優は誰だろう?と
女衒たちを向こうに回し、度胸の座った芝居が上手く
何処かで観た様な・・・は調べたら水之江瀧子。
ターキーと呼ばれたSKDのスターであり
私らには懐かしいNHK番組ジェスチャーのレギュラー
日本初の女性映画プロデューサー
(石原裕次郎、岡田真澄を発掘)
そして世間を騒がせたロス疑惑の三浦和義の叔母だ。
それを機に彼女は人前から消えた。
日活で育った監督・熊井啓は映画プロデューサーとしての
彼女の迫力を間近に観ていて此の役に抜擢したと思われる。
戦前戦後と昭和と言う大変な時代を生き抜いて来た女性たちには、
それだけで頭が下がる。

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