2024年7月19日金曜日

「敦煌」(1988) : 佐藤純彌監督作品
実は此の原作を読んだ時、私は13歳。
その時の興奮たるや、砂漠を頭の中を人馬が駆け巡り、
ウイグルの王女ツルビアの美しさを想像し
2、3日寝付けない程だった。
それを倒産した永田雅一体制の大映を徳間書房が買取り
徳間康快が映画化するというニュースが1974年
「人間の条件」を撮った小林正樹が仲代達矢主演で
此の話に私も納得したものだが何しろ物語は
シルクロードのど真ん中、海外ロケにエキストラと
膨大な予算に、クランクインまでに至らなかった。
それでも徳間康快の執念は収まらずロケとエキストラには
中国政府との協力が不可欠と中国との貿易をしていた
株式会社・丸紅に近づき資金面の活路を見出し
1974年ようやくクランクインとなるはずだったが
今度は脚本までできていた監督小林正樹と徳間康快との
イメージに差があり、小林は降板、
徳間は”仁義なきシリーズ”で気を吐いていた
深作欣二に白羽を矢を立てた。
仲代がやるはずだった主役・朱王礼に千葉真一
王女と恋をする青年に真田広之。
これは此れで成り立った映画だったろうが徳間は深作とも
内容が折り合わず、深作は同じ東映の佐藤純彌に監督を譲った。
・・・とまあ前置きは長くなったが
此の映画、公開当時見た時は仲代達矢がやる筈の役が西田敏行。
豪放磊落な武将をなんで釣りバカのハマちゃんが?
三国連太郎の息子が何で?とハナから馬鹿にして
原作とのギャップに納得出来なかったが
それから大分経って観ると監督・佐藤純彌のキャスティングに
西田敏行も佐藤浩市も答えて、その後の彼らの演技は
此の作品がポイントになったのではないか。
そにかくC.G無し中国人民軍エキストラの数たるや
70mmハリウッド聖書物映画並み、いくら近いからとは言え
セット、衣装、美術考証の見事さには今観て納得。
ただし此のロケにはオチがあり中国側は資金回収を無理と見たか
日本から持ち込んだ撮影機材を撮影後、殆ど現地で没収されたとか?
それはともかく原作井上靖の映画化としては可なりの完成度。
2時間23分の大作、監督・佐藤純彌の代表作と言えるだろう。

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