「我等の生涯の最良の年」(1946):ウイリアム・ワイラー監督作品
BSに放送大学と言うチャンネルが有り、
無料で此れを放映していた。
題名からして堅苦しそうで映画史の中でも
有名な此の作品を実は見逃していた。
作られたのは太平洋戦争、終戦直後の1946年
なんと、私の生まれた年だ!
本土に戻って来た、世代も職業も違う復員兵3人が、
故郷が同じと言うことで仲良くなり、その後も付き合う。
1人は中年で年頃の娘に高校生の息子と妻が待っていた。
運良く銀行の役職に復帰出来るのだが・・・
2人目はドラッグストアの店員だったが
元の職場をクビになり、しかもクラブ歌手の妻に見放される。
3人目は両手を軍事工場の事故で失い義手になっていて、
婚約者との結婚を躊躇っている。
此の3人に、それぞれの戦後の事情が待ち構えていて
それがリアルな会話で描かれる。
例えば”ヒロシマはどうだった?”と息子に問われ、
戸惑う父親の銀行員で 原子爆弾の脅威が
アメリカ側にも伝わっていた事が分かる。
就職面談に”君は何が出来るのかね?に
"飛行機の機関銃を撃つ事しか出来ない!”と
生真面目に答える元店員は新しい社会に馴染めない。
”手首が無くちゃ彼女の髪を触れない!”と言われる傷痍軍人は
今なら、どうにでも手首など合成出来るが
当時これを演じたハロルド・ラッセルは本当に手首が無く、
しかも演技は素人、
それが真実の感動を生んでアカデミー助演男優賞。
既に廃棄処分になった戦闘機B-29が
ズラリと広大な墓場の様に並び、
それに乗り込んだ元機銃兵の男は幻覚か戦場がフラッシュバックする。
あの戦闘機が日本本土を爆撃していたと思うと、とても怖い!
後に「ベン・ハー」でオスカー11部門を得る
ドイツ生まれで ナチスから逃れてハリウッドに渡った
ユダヤ人監督ウイリアム・ワイラーは
此の地味な作品で、9部門のオスカーを得ている。
ジャズ・スタンダード曲”スターダスト”で有名な
ホーギー・カーマイケルがクラブでジャズピアノを弾く場面に出演。
甥の義手の傷痍軍人と連弾をするのがハイライト。
いや、ハイライトはドラッグストアの店員が愛の無い妻と別れ、
本当に好きになった銀行員の娘と結ばれて
"我等生涯最良の日"となる。
あの淀川長治は ”生涯最良の日では無くて、本当は最悪の日なんですね。
ウィリアム・ワイラーは3家庭を通して
当時のアメリカの現実を見せたんです、
巧いですねえ凄いですねえ”
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