「無法松の一生」(1943) 稲垣浩監督デジタル・リマスター版
岩下俊作原作の此の映画化は主演の松五郎役が
阪東妻三郎、三船敏郎、三國連太郎、勝新太郎と4本有るが私は全部観ている。
コレはその最初の作品で戦前の稲垣浩の監督である。
続けて放映されたドキュメンタリー「無法松の一生をめぐる数奇な運命」は
題名通り此の映画の数奇な運命を解説している。
"奥さんワシャ汚い!“は松五郎が吉岡夫人に言う台詞。
戦争未亡人に車夫ふぜいが恋するとは何事ぞ!と当時の軍事検閲で
無法松の吉岡夫人への想いはズバッと何ヶ所も切られてている
と言うか公開するには自ら切らざるを得なかったらしい。
戦後、稲垣浩のセルフ・リメイクで先のセリフは
三船敏郎が高峰秀子相手に言わせて復活した。
勝新版では有馬稲子の吉岡夫人が松五郎の枕元で
"ワタシも好きでした"と大胆に告白している。
初版のカメラマン宮川一夫のカメラ・アングルに
フレームそしてオーバーラップの手法は流石に素晴らしく
此のドキュメンタリーで作品をデジタル補修した宮川一夫の弟子・宮島正弘氏が
此の作品は「羅生門」「雨月物語」と続くカメラ宮川美学の原点と語っている。
キャスティングに阪妻はトーキー映画に乗り遅れ此の映画に賭けたと。
そして月形龍之介の侠客役はその貫禄が効いている。
無法松が見ては憧れた昔の日本酒ポスター通りのヒロイン園井恵子は、
新藤兼人の映画「サクラ隊散る」にも描かれたが
此の映画の後、当時公演していた軍事慰問先の広島で
浴びた放射能で亡くなっている。
子役は後の長門裕之だが此の時、"僕のお嫁さんは園井恵子さんみたいな人が良い"と
言ったとか言わないとか。
入院してやる事ないから又観た映画だが、
鼻の涙腺を塞がれているせいか、涙が目から溢れて止まらない!
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