2021年12月4日土曜日

追われる男 (1955):ニコラス・レイ監督
その昔、フランスのヌーベル・ヴァーグの若手監督たちに
敬愛されていた監督ニコラス・レイの西部劇である。
彼の傑作「大砂塵」と「理由なき反抗」の間に作れた
中々の名作である。
なのに、日本で殆ど知られてないのは
”ジョニー・ギター”の様な良い主題歌もなく
良い邦題が付けられていなかったせいもある。
全く日本の配給会社宣伝部の無能さは、どれだけの
名作から客の足を遠退けさせたことだろう・・・と
文句はさて置き、ヌーベル・ヴァーグの若手監督たち同様
ニコラスの才能の素晴らしさを讃えよう。
プロットは西部劇らしく、馬に水を飲ませようと
川辺に降りてきた主人公が
(何と悪役専門俳優ジェームス・ギャグニーが主役)
若者と出会う。此の若者が孤児でグレている。
此の若者役を、あのジェームス・ディーンの様な
甘いマスクのジョン・デレクが演じる。
ニコラスは自身、後半俳優もやり、メソッド演技指導は
アクターズ・スタジオのリー・ストラスバーグ並だったらしい。
此の二人が町へ行く途中、列車強盗と間違われ撃たれ
若者は大怪我し近くの農場へ運ばれる。
その農場にはスウェーデン移民の父娘が居て看病する。
此のスウェーデン移民という設定が
”移民の国アメリカ”の長い歴史を感じさせる。
列車強盗と間違われた主人公は疑いを自ら晴らし
町の保安官として雇われるのも
怪我をした若者の面倒を見るためと、
スウェーデン女性に惚れた為。
ニコラス・レイの作品は、断崖絶壁に砂漠と西部劇らしい
スペクタクルな背景にしたアクションに
現代にも通用する男女の愛憎が描きこまれているのが魅力だ。
ジェームス・ギャグニーという個性的な役者を逆手に
”過去のある男”として、只のヒーローにしていない。
先の「大砂塵」も、後の「理由なき反抗」もそうだったが
台詞の一つ一つに監督ニコラス・レイの哲学を感じさせる。
私が持っているDVDは此れくらい。もっと集めたい。



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