2021年6月30日水曜日

「無法松の一生」(1965)  

此のところTVオンエアで面白い作品がないので

録画した勝新ものを纏めて観ている。

(勝新は座頭市以外にも面白い作品が多いのだ!)

此の無法松の原作は岩下俊作の「富岡松五郎伝」

坂東妻三郎と三船敏郎で稲垣浩監督が二度、

三度目は三国連太郎で監督は村山新治。

此の時は我が故郷蔵の町栃木市がロケに選ばれ

私は観に行って現場を離れ徘徊老人みたいに

フラフラしていた俳優・左卜伝に会った。

そして此の勝新太郎で四度目。

監督は勝新を「座頭市物語」で俳優として開眼させた三隅研次。

脚本は稲垣浩の時と同じ伊丹万作(伊丹十三の父)だから

セリフも同じで展開も同じ

前作を何度も観ている私には三船敏郎と勝新が重なるが

それだけ此の二人の俳優のキャラクターが似ているという事か?

つくづく「影武者」を勝新で観たかったと思う。

さて勝新の無法松だが、とにかく粗暴だが可愛い奴を

見事に演じている。

彼が慕う吉岡未亡人の有馬稲子も絶頂期の美しさで

前作の高峰秀子よりも勝るくらい。

何より脇を固める俳優たちが宮口精二、宇津井健は元より

大辻伺郎、遠藤辰雄、伊達三郎と大映所属の名優が続々。

特に松五郎が打つ祇園太鼓を此れが打てる奴はもう居ないはず

一言で起用された古老役の荒木忍は

日本映画がトーキーになる前から名監督作品に出演している名優。

そして、その太鼓を打つ勝新は長唄三味線方の杵屋の生まれ

スタンドインなしで打ちまくる場面は”本物”だけに圧巻!

それこそ、此んな太鼓が打てる役者はもう出てこないだろう。

役者ばかりでは無いスタッフが又

カメラ、照明、美術と江戸から明治に代わったばかりの

九州・小倉の風景はこんなだったかと記録映画の様に再現している。

前3作に無かった冒頭の子供たちが夕方に蝙蝠を追う場面

そして松五郎が空を見上げて死ぬ場面の雪の表現など

その後「大魔神」(監督・三隅研次)で東宝とは又違う

特撮を極めた大映の技術が光る。

音楽は”ゴジラ”の伊福部昭だが彼のアジアの哀愁とも呼ぶべき

定番メロディーがラストの有馬稲子が松五郎の遺体に

なりふり構わず、しがみつく場面を盛り上げた。










 

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