2020年8月18日火曜日


私は普通の人では無いと自覚しているが
何故か私の出会った人たちに”変な人”が多い。
此れも”忘れ得ぬ店”と同じ様に
だんだん記憶が薄れて来ているので
書き留めて置きたい。
その1”タクシードライバー”
もう何十年か前になるが私がCM監督をしていた頃の話。
撮影が押して深夜になり電車も無いので制作の人が
調布の大映か日活だったと思うが撮影所にタクシーを呼んでくれた。
その頃私は浅草に住んでいたから運転手にとっては
深夜料金も付くし嬉しい長距離だ。
ご存知だと思うが世田谷は農地を住宅地にしたから
道路が入り組んでいて今の様にカーナビの無い時代
可成りのベテランでも分かりづらい。
その運転手は年の頃、30代後半だったと思うが
道順に手こずって焦っている様だった。
私が「世田谷の道路は難しいからね」と助け舟を出したら
彼は「失礼ですが撮影所で貴方は、どんなお仕事をなさってるんですか?」と
それで「私はCMの監督です」
それに彼は何を勘違いしたか「えっ、それは凄い!」
運転手「監督ってタレントや歌手を使うんでしょ?」と来た。
私「まあスポンサーや代理店から押し付けられることもあるけど」
運転手「実は自分、歌手になりたくて今レッスンに通ってるんです
此のタクシー会社の寮に入れて貰い給料は殆どレッスン代です」
その間、彼は私をずっとバックミラー越しに見たまま
全然、前の道路を見ていない。
その上、「今習っている曲を聴いてもらえますか?」と来た。
これには私も「良いけど、道が複雑だから真っ直ぐになったら歌ってよ!」と。
運転手「分かりました高速に出たら歌わせてもらいます」
私「・・・」
そのうち私は疲れでいつの間にかウトウト。
運転手「高速入りました!」で起こされ
「それでは歌わせてもらいます!」と歌い始めた。
考えたらスピードが出てるから高速のほうが、もっと怖い。
すっかり自分の世界に入っている彼に辞めてと言いそびれ
浅草駒形の高速降り口まで聴かされた歌が何だったか
もう忘れたが、その恐怖心は今でも憶えている。



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