2019年10月3日木曜日

去り行く男 (1955)
デルマー・ディヴィスといえば
私が高校生時代に観た「避暑地の出来事」の監督である。
その彼は初期の頃は西部劇を得意としていた。
優れた脚本家でも有る彼の「決断の310分」は最近リメイクもされた。
この作品は、それより以前に作られた異色西部劇である。
何故異色かは、勧善懲悪の痛快アクション映画と言うより
登場人物の人間性、心理描写に重きを置いて
物語が構成されているからである。
冒頭、荒野をさすらい、崖から落ちて気を失っていた男を
偶然通りかかった牧場主が助けて自分の牧場へ連れて帰る。
この気を失った男をグレン・フォードが演じ
助けた牧場主はアーネスト・ボグナインが演じる。
グレン・フォードといえば「スーパーマン」(1978)を育てる
優しい父親役の印象が有るが、
此処でも彼は過去に悲惨な生い立ちが有るにもかかわらず
健気にカウボーイとして生きていた男を演じている。
そして、その人の良い牧場主をアーネスト・ボグナイン。
彼の粗野だが純情な田舎男がハマっている。
更に主人公を誘惑する妖艶な牧場主の妻、
そして、それを妬く牧童の一人に
若き日の名優ロッド・スタイガー。
彼は、その人妻ともデキていて、彼女の心が主人公に移り
牧童のリーダーの座も彼に奪われ嫉妬に狂う敵役。
此れに幌馬車で旅をしながら布教活動している一団が絡んで、
その牧師の娘の許嫁が、また嫉妬して
主人公を窮地に追い詰めていく。
しかし、主人公が雇った新しい牧童が彼を助ける。
此れをまだ若いチャールズ・ブロンソンが格好良く演じ、
後の彼の成功が此の映画で窺える・・・と
まあ大雑把な解説だが、
原題の「ジュバル」は主人公の名前
邦題の「去り行く男」は意味がわからない。
せめて「過去に追われる男」なら当人も映画の中で呟くし。
牧場主の妻の牧師の娘への嫉妬からくる嘘で
物語は大きく展開する
クライマックスはアメリカ西部劇の枠をはみ出して面白い。
思い出したのはマキノ雅広の言葉
映画は1スジ(脚本)2ヌケ(映像)3シバイ(演技)
2番目の映像を言うの忘れていたが
これぞ西部劇!という雄大な風景をフレーム納めた
ロング・ショットの追跡場面に、
登場人物のド・アップの迫力は見事にヌケている。
「大砂塵」と言い”西部劇”の奥は深い。

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