2017年4月25日火曜日

「アフガン」(2005)
本当のソビエト題名は「第9中隊」
アフガニスタン紛争の話だから”アフガン”
そこへ1988年に投入されたソ連の若き兵士達の物語。
此の手の映画は”戦争映画”として纏めて居るが
「Uボート」「スターリングラード」と並ぶ傑作。
その2作同様、戦闘場面の激しさも、さることながら
若い兵士たちの儚い青春が見事に描かれて居る。
映画の冒頭、少年たちは新兵として丸刈りにされ
J・P・ゴルチェばりのボーダーの下着に
ほとんど誰が誰やら見分けが付かないが
徐々にユーモアを交え、個々を紹介してゆく巧い導入だ。
お互いにバラバラだった彼らが激しい訓練で
仲間意識が出てくるのを丁寧に描いて居る。
童貞の兵士に、仲間がアフガンで死ぬ前に
女を知っておいた方が良いと
”白雪姫”という娼婦を充てがうのも切ないエピソード。
そして、その通りに成ってしまうのだが。

彼らは空輸されアフガンに着くやいなや
さっそく、基地が爆撃され炎の海となるのに圧倒される。
そしてエピソードは彼らの前線での8日間だ。
たった8日間ながら、映画は2時間半の長編が
あっという間に過ぎる迫力、その戦闘は此の世の地獄。
いつ襲ってくるか分からないイスラムの武装勢力に怯え
彼らの顔も、古参兵と見分けが付かないほどに変わる。
その古参兵に、あの清原そっくりの兵士が出てくる。
考えればソ連はモンゴルに近いから
アジア系が居てもおかしく無いのだが、何故か親近感がわく。
結局、若い兵士で生き残ったのが1人だけという悲惨な結末。
ペレストロイカの後、社会主義が崩壊して
ソビエト政府は、彼らの出兵を当時の軍部が把握しておらず
彼らの犠牲は全く無駄であったという、ラストの結論は
いつの世にも繰り返す戦争の悲劇と片付けてしまうには余りにも酷い。
彼らの儚い人生を誰が償うというのか?

監督は、ソビエト映画の巨匠セルゲイ・ボンダルチェクの
息子フョードール・ボンダルチェク。
父親と同じく俳優として出演して居るが
若い兵士の生き生きとした表情を見事に演出し
更に戦闘場面はソビエト軍の全面協力の
全くC.G.を使ってない生の迫力は驚異。
そして、そのコントラストとして
アフガンの風景を溜め息が出るほど美しく捉えた
カメラはニコラス・レーリッヒの絵を思い出させる。
此んな力のある監督が、ソビエトに居たなんて!




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