名探偵ポアロ「チョコレートの箱」
シリーズでは珍しい、ポアロがベルギーで
まだ警官をしていた頃の話。
かなり昔の設定だから主演のデビット・スーシェも
メイキャップで髪の毛を増やしダイエットでお腹を凹ませ
とても若く作っている。
しかし若く見えるのは、見かけだけでなく
ポアロが此の事件では、恋をしているエピソードだからだ。
その後「二重の鍵」で女泥棒にも恋をした彼だが
ベルギー時代にも恋をしていたとは・・・。
話は盟友ジャック警部がベルギーで叙勲を受けるのに
お供でロンドンからポアロが付いて来たと言う設定。
ポアロには懐かしいブリュッセルの街並で想い出したのは
彼が、まだベルギーの警察官時代の未解決事件。
そしてドラマは過去へと遡る。
ポアロは訪ねて来た美しい女性に
従兄が心筋梗塞で死んだと云う事になっているが
実は殺されたのではないか?と真相解決を依頼される。
上司から”爆ぜる火花”と疎(うと)まれているポアロは
それは既に解決済みの事件と、
上司から捜査中止命令が出たのにもかかわらず
ポアロは自分の休日を利用して事件の解決に乗り出す。
此処で初めて”名探偵ポアロ”が誕生する訳である。
此の事件、アガサの原作には無い、オリジナルの脚本らしい。
時は第二次世界大戦が始まったばかり
ドイツとの駆け引きや、カソリック等宗教との諍いで
ポアロの捜査は困難を極める。
それでも彼が犯人探しを止めないのは
彼の性(さが)=真実の追求か?彼女への愛ゆえか?
彼女から、捜査依頼のお礼にと
プレゼンされたブローチの形は洒落た”小さな花瓶”
今回、ベルギーに戻った時からポアロがそれを
さりげなく襟に付けているのが、何ともけなげ。
そしてポアロは家宅侵入の違法捜査までして
犯人を追いつめたか?に見えたが・・・止むを得ぬ事情により
結局、犯人を特定するのを止め、事件は未解決となる。
その後、ポアロは警察署を退職し、ナチスを逃れて
英国のロンドンへ亡命というのが、此のシリーズの始まり。
そして今回ジャック警部とベルギーに戻って来て
「真相を話す時が来ました」と
心残りだった過去の事件を説明するのが主な内容。
ラスト・シーンに現れた、且つての淡い恋の相手は
ナント、事件で協力してくれた薬剤師と今は結婚。
ポアロは彼等の二人の息子まで紹介される。
その息子の1人に”エルキュール”と名前を付けているのを
ポアロは切ない想いで受け止める。
此の時のデビット・スーシェの演技が泣ける。
歴史的な建造物が未だに保存されている
ベルギーの首都ブリュッセルや古都アントワープの
街並や館を、思う存分撮り入れた映像が美しく
それが名優達の演技にリアリテーをもたらしている。
”ポアロ・シリーズ”でも可成り出色の作品だ。
蛇足ながら、題名の「チョコレートの箱」は
ベルギーの事件らしく”毒入りチョコレートの箱”の事。
本場だけにチョコレートが、とても美味しそうだった。
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