2016年2月1日月曜日


GONIN (1995)
此の監督、石井隆は漫画家出身である。
その昔、雑誌ヤングコミックの「天使のはらわた」で
主人公・名美の濃厚なエロティシズムに釘付けにされたものだ。
その劇画は日活ロマンポルノが映画化し、それもヒットした。
しかし彼は元々映画マニアで早稲田の映研時代から
ライターとして生活していた。
だから、その劇画は所謂”絵コンテ”
カット割り等、即、映画に出来るものであった。
その彼が「死んでもいい」「ヌードの夜」の後
作った犯罪バイオレンス映画である。
極力、エロティシズムは抑えているが
その代わり、余り有る血みどろの暴力シーンの連続に
観るものまでボコボコにされてしまう。

話はディスコのオーナー(佐藤浩市)が
バブルが弾け、暴力団への多額の借金返済に困り
その暴力団の金庫に集められた
財界汚職の大金を盗もうと計画する。
その仲間に集めたのが、新宿のバッティングセンターで
知り合った変な奴ばかり
1人はリストラされた切れ易いサラリーマン。
此れを石井隆映画の常連・竹中直人が
顔から身体から細工してデブの中年に変身
例によって、奇声をあげバットを振り回し怪演する。

2人目はディスコで恐喝して遊んでいた若者に本木雅弘。
彼も「シコふんじゃった」でノリに乗っている時期。
佐藤浩市との関係は微妙に怪しい雰囲気。

3人目は暴力団の1員でパンチ・ドランカー。
此れを金髪にして誰か判り辛いが椎名桔平が演じる。
そして元刑事だが汚職でクビになり
今はキャバレーの用心棒というのを根津甚八。

これを中々の貫禄と哀愁で演じる。
此の5人でタイトルの”GONIN"と云う訳。

果たして此んな危ない連中で
要塞の様に堅固な暴力団事務所は攻略出来るのか?
それがドンパチ・ドンパチと激しい
拳銃の撃ち合いの末、成功したかに見えたが・・・。

怒り狂った暴力団は、金を奪った彼等を突き止め
殺し屋を雇い、追いつめる。
此の殺し屋役にビートたけし。

「その男、凶暴につき」以来バイオレンスには
打ってつけのキャラクターは情け容赦なく
椎名桔平、竹中直人、佐藤浩市と殺して行く。
家族まで巻き込む殺し方は凄惨で気味悪く
むしろ、主役はビートたけしで
”殺しの美学”を描いたのでは無いかと思うくらい。

ラストどうなるか?は、まだ観てない人に
明かすのは失礼なので,我慢するが
此の作品、気に入ったのは
最後に殴り込みをかける前、根津甚八が
車の中で”シャブ”を打ちながら
殺された女房(永島暎子)が好きだった
ちあきなおみの”紅い花”を聴いている処
気に入らないのは
客観性の無い編集と音声
劇画のカットと同じ様に撮っているから
アングルは面白いが、話が繋がらない。
音をちゃんと録っていないから台詞もが判りづらい。
それらも全部、彼のスタイルだと言えば
しょうが無いが・・・。
此の20年後の話を「GONINサーガ」(2015)として
監督したらしいので
少しは巧く成ったか観てみたい。

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