ポイント・ブランク殺しの分け前(1967)
先日TVでやっていたジェイソン・ステイサムの「パーカー」
何処かで観た様な筋だと思ったら
上のポスター「ポント・ブランク殺しの分け前」のリメイクだった。
前にもメル・ギブソンで「ペイバック」というタイトルで
リメイクされており3度目の映画化。
原作はリチャード・スタークのハードボイルド小説
”悪党パーカー・人狩り”
まあリメイクどちらも、そこそこ面白かったが
カルト・ムービーとして、未だにマニアの間で人気のある
最初の映画化には到底敵わない出来。
それで今日は此のポスターも懐かしい
私が20代半ばに観た此の作品をじっくり掘り下げてみようかと。
此の監督ジョン・ブアマンは英国BBC出身。
アメリカに渡り、此れがハリウッド第一作。
独特なストリーティングと編集スタイルは難解と
プロデューサーに製作中止を言い渡されるも
人気上昇中の主演リー・マーヴィンの後押しで完成。
それでもアクション映画としては知的過ぎ
一緒に観た映画マニアを自負する友人と
ラストの解釈を巡って私は論争をした覚えがある。
そのラストというか、全体のシナリオだが
パーカーという名のギャングが仲間と強盗を働いた後
その仲間に分け前を横取りされ、殺されかける。
何とか生き残り、パーカーは自分の取り分どころか
女房まで仲間のボスに寝取られた事を知り
まず女房の部屋を襲うが、女房を殺す気にならない。
此の辺りの編集と映像がサイケデリックで
仰角のアングルが当時の英国TVドラマ「プリズナーNo.6」を
彷彿とさせるテンポで切れ味が良い。
パーカーはボスに会いに行き、自分の取り分を寄越せと迫る。
しかしボスはパーカーに殺される直前
俺の後にはマフィアが付いていると脅すが
結局パーカーはビルの上からボスを突き落とす。
そして、敵うすべも無いマフィアに挑戦を挑む。
此の辺りの無鉄砲さを、メル・ギブソンや
ジェイソン・ステイサムが気に入ってリメイクしたのだろうが
当時、絶好調の怪優リー・マーヴィンの人間離れした
ブルトーザーの様な迫力には遠く及ばない。
そしてパーカーの勢いに負けたマフィアも
アルカトラスの刑務所跡で金を払おうとするが
それを受け取らないパーカーが、何ともニヒルで格好良かった。
此の映画”殺しの分け前”とサブタイトルが付いていたが
私は”分け前”では無く”おとしまえ”の映画
なのでは無いかと思うのだ。
東映ヤクザ映画と同じで、相手がどんなに強くても
”スジの通らない話は許せねえ”と云うのが主人公パーカーの信条。
それに観客はエモーションを掻立てられるのだ。
監督ジョン・ブアマンは此の後
リー・マーヴィンと三船敏郎で「太平洋の地獄」という
名作を撮っているが、此れも米日敵同士が孤島で
生き残るため助け合う異色戦争映画。
そして、米国奥部の川下りに行った仲間が
次々に辺境の得体の知れぬ者に襲われるという
アクション・スリラー「脱出」。
そして007のショーン・コネリーをフンドシ姿にして
SF映画「未来惑星ザルドス」と
何れも、全くジャンルの違う作風は此の監督の
懐の深さ、才能の豊かさを感じさせた。
「戦場の小さな天使たち」は題名とは随分違う
第二次世界大戦中の自らの英国少年時代を描いた
瑞々しいジョン・ブアマンの私小説的作品。
ラストに主人公が焼け跡の撮影所に興味を持つ処で
映画が終わるのが、”らしく”て面白かった。
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