三田佳子(1941~)
私は彼女の人気がピークとの時、CMでずっと
監督として、ご一緒させて頂いた。
そう芸能人、高額納税番付で4年連続1位を
取っていた頃である。
その大輪の花とも例うべき艶やかさは
味噌汁のダシのCMに実は不向きであった。
だから、その濃厚に放つ匂いを消す為に
苦労した覚えがある。
彼女が映画デビューをしたのは第二東映
あの高倉健がコミカルなサラリーマン役をやっていた
半端な時代に、育ちの良いお嬢さんの彼女は
そのままの芝居で、やはり半端な女優であった。
その健さんがヤクザ映画でブレイクした後も
彼女は、その添えもの綺麗な女、半端なままであった。
それが澤井信一郎・監督「Wの悲劇」で大女優に化けた。
此の役は、自分の愛人の腹情死を薬師丸ひろ子に
代わらせるという、凄まじい悪役である。
それを何処に今ままで眠っていたかの様な演技力で見せた。
此れが映画のヒットと共に、その年の女優賞を
彼女が総なめにするという結果となり、翌年
NHK大河ドラマには珍しい現代劇、しかも主役が女性という
脚本・橋田壽賀子の「いのち」を生んだ。
大河ドラマ人気にCM業界が飛びつくのは今も同じ
彼女は同時に何社も掛け持ちタレントと売れまくって
先の長者番付の結果となった訳である。
しかし私との仕事の間も、
「子供が小さい頃から云う事を聴かなくて・・・」と
いつも家に居られない母親としての
自分を嘆いていた内はよかったが
子宮がんで手術したばかりの彼女に例の次男の麻薬騒動
神輿を担いでいた業界が一番先に手を引いた。
露骨なほどの引き潮であった。
しかし彼女の側に居た私は、敢えて云わせてもらえば
彼女のキャラクターは日本人好みの可哀想な
”耐える女”では無い、「外科医・有森冴子」の女丈夫
いや「ドクターX」の米倉涼子を喰おうとする年増女医こそ
彼女に相応しい役なのだ。
健気(けなげ)な母親役は、あくまでも
つまり味噌汁の味、誰もの記憶にある優しい母の味を
想い出させるフィクションだったのだ。
当時、長く続いた此のシリーズCMを
「私、こんな良い母親じゃない!」と当人は嫌がっていた。
でも世間は、その虚像の母親を現実の彼女と勘違いし
カメラの前に引き出し、母親の責任と断罪した。
しかし彼女は息子を守るため、折れそうになる心を奮い立たせ
強気に鬼母の役を演じた。
マスコミは自分達が想像していたシナリオと違い
泣いて詫びない母親に落胆し、彼女を葬った。
そして歳月は流れ・・・
2014年、長い芸能生活をようやく認められ
彼女は国から”旭日小綬章”を貰った。
さて今度こそ、本当の彼女の季節
”熟女の季節”なのだ。
此れからの躍進=巻き返しを期待したい!





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