永遠の僕たち(2011)
名作「グッド・ウィル・ハンティング」の監督
ガス・バンサントの作品である。
私の苦手な、いわゆる難病もの映画である。
それでも語り口が瑞々しく、柔らかい音楽で語られると
「小さな恋のメロディ」の淡い恋を思い出してしまった。
それでも話は、やたら暗く
両親を交通事故で亡くした少年が
”死”の観念に取り憑かれ
他人の葬式に立ち会う奇行を繰り返す。
(ルネ・クレマンの「禁じられた遊び」と同じ)
しかし、その少女が実は脳腫瘍で
余命幾ばくも無いという、どうにもやり切れない展開。
一方、少年は何故か日本人の若い特攻隊の
幽霊が見えるという設定。
時空を超えた若者同士
その幽霊と友達になり昼夜遊んでいる。
(此の幽霊を加瀬亮が演じている)
余りにも出来過ぎたシナリオに、
だいたいの結末は想像出来るのだが
それでも少年を演じるヘンリー・ホッパーが
あの怪優デニス・ホッパーの息子
父親譲りのキレ易い、いや繊細な、というべき演技と
少女役のミア・ワシコウスカの
難病を抱えて居ても最期まで明るく生きようとする
健気(けなげ)さに魅入られてしまう。
”夭折”という言葉がある様に若くして死ぬ事は
とても切ない話だ。
神風特攻隊を今の若者は無駄死にと思っても
彼らの想いを残した遺書に涙せずには居られない。
ガス・バンサントは、どうして加瀬亮を知ったのか
解らないが、本物の特攻隊の様な
彼の静かな佇まいが此の役にぴったりだ。
此の俳優、7歳までアメリカに居た帰国子女らしいから
少年と話す英語がとても自然だ。
だから最後の場面で、愛する人へ渡さなかった
遺書を読む彼のナレーションは心に響く。
日米双方、膨大な犠牲者を出した
あの太平洋戦争も、もはや戦後70年。
特攻隊の扮装を”ハロウィン”で戯(ふざ)けて着る世代に
戦争の悲惨さ空しさは解らないだろうが
人の命の儚さ、尊さを伝えようとする監督の狙いは
此の作品で成功した様に私は思える。
ラストのタイトル・ロールに、ガス・バンサントの
”デニス・ホッパーの想い出に捧ぐ”の一行は
映画ファンならグッと来るだろう。
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