桃井かおり(1951~)
三田佳子に続いて彼女も私に関わりのある女優である。
JRナイスミディのCMで何年か、ご一緒した。
彼女だけではなく竹下景子さんとコンビであったが。
竹下さんは演じている役と同じ
庶民的な方で、奈良の大仏前で
「監督、お土産を買いたいからお金貸して!」
と気さくに云う人であった。
勿論、すぐ返して貰ったが(笑)
一方の桃井さんと言えば
鹿児島の最南端の撮影が当日、村の選挙と重なり
投票会場がロケ現場のナント直ぐ隣り
過疎地のはずが村人全員集合の大群衆
村始まって以来の大イベントを見逃してなるものかと
皆、固唾をのんで待つという状態。
今か今かとフラミンゴの様に首を長く伸ばし
ロケバスの窓を覗いた群衆の1人が
「竹下景子の隣りに居るデブは誰だ?」の
ひと言に、デブでない彼女は怒り狂い
「とにかく私の目の範囲に野次馬を寄せないで!」
制作は縄を張り、体を張っての人避け。
確かに、その頃
竹下さんはCMで理想のお嫁さんイメージNO.1
桃井さんが主演したNHKの名作「花へんろ」や
映画「幸福の黄色いハンカチ」は忘れられていた。
CMで活躍する今ほど彼女の知名度は高く無かったのだ。
「私って油断すると”片桐はいり”に間違われるの」と
自分のオカッパ頭の冗談を言う位であった。
だから気さくな彼女と仕事以外でも私は
プライベートな、お付き合いをさせて頂いた。
映画「ツイン・ピークス」の宣伝に
来日したデビット・リンチ監督に会いに行こう!と
日比谷でデートした事を告白するが
残念ながら週刊誌が喜びそうなネタは何も無い。
それより当時、彼女が付き合っていた
ジャニーズ事務所の某君の話を
大勢の客の居るラーメン屋で、あの声で話すので
「その話、此処ではヤバイから」と
帝国ホテル地下の客の居ない喫茶店に
移動させた記憶が有る。
とにかく彼女は天衣無縫、よく此れまで
スキャンダルでマスコミに潰されなかったものだ。
敢えて言うが、私は彼女の大ファンである。
彼女を撮ると、まったく想定外の演技をするから
監督としては、とても魅力のある素材なのだ。
それでもロケ現場で、彼女が
「私、此のコンテやりたく無い!」と突然言い出し
(業界の通例ではコンテは誓約書、スポンサーも
上役に許可を取っているので簡単には変更出来ない!)
当然、現場はパニックになるが
私は前回の三田佳子さん等
猛獣(失礼)の様な女優には慣れていたので
「それでは此れでは、どうですか?」と作座に別案
ギリギリの変更だが、その方が面白く成ったのは
まだCMの現場が自由だった時代ならばこそ。
彼女の交友関係は、亡くなった松田優作に原田芳雄など
皆、その役者魂が半端で無かった人ばかり
彼女の女優としての素質は勿論、天性のものも有るが
彼女の此れまでの”生き方”から造り上げたものなのだ。
そして「なのよね・・・」という今の女の子が使う桃井節は
彼女が如何に現代の先端を生きているか?の証し。
若い娘たちは自由に生きる彼女に憧れ、真似をしているのだ。
自分で脚本を厳選して出演し、尚かつ監督とも対立しながら
挑んだ作品には何処にも”桃井かおり”の存在感が
鮮やかに残って居る。
此れからも日本を代表する、いや今やラトビア映画出演
そして米国を拠点として国際スターの道を進む彼女。
アカデミー賞女優に年齢制限は無いのだ
”熟女の季節”の彼女に、心からエールを贈ろう。
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