2015年4月14日火曜日

鬼平犯科帳スペシャル 泥鰌の和助始末
此の作品は先にタイトルの”泥鰌の和助”を
財津一郎が演じたもののリメイクである。
それが結構出来が良かったので
その和助を”悪役列伝”でも早めに出て来た
私の好きな俳優・石橋蓮司が演じ、更に2時間の枠で
どう拡げるか興味が有った。
脚本はスペシャル枠には必ず起用される金子成人
彼は向田邦子ドラマの後半を受け継いだ名手
人の情を描くのに長けている。

話は今は足を洗った老盗賊が息子の敵を討つために
もう一度”お務め”に立ち上がるというもの。
息子を死に追いつめた大店(おおだな)の倉庫の金を奪う計画
彼は仕込みに何年もかけ、殺さず、犯さずの
”キレイなお務め”は一度も捕まらず
ぬるぬるとして掴み処が無いので”泥鰌”な訳だ。
此の男に鬼平は若い時、一度会っている。
鬼平がグレて居た頃、金の困り盗みに誘われ
現場に行くと此の”泥鰌”の親分が居て
「お前さんは”お務め”に向いてねえ」と金だけくれて
追い返されたのだ。
その恩義から鬼平は”泥鰌”の成り行きを見守るのだが
”お務め”の後、仲間の裏切りで”泥鰌”は切られてしまう。
鬼平は瀕死の彼を屋敷に運ぶが
看護の甲斐なく死んでしまう。
鬼の目に・・・ではなく鬼平の目に涙。
朝霧の中庭の場面が、なかなか良い。

中村吉右衛門は歳を重ねて
流石に”鬼平”らしく成って来た。
それに多岐川裕美も老けて大分それらしい。
梶芽衣子、綿引勝彦、三浦浩一などのレギュラー密偵に
まだ元気だった蟹江敬三も出ていたが
相模の彦十役の江戸家猫八が亡くなって居ない。
それは長寿シリーズだけに仕方の無い処。

”泥鰌”の狙いは金ではなく蔵に在った証文
それを全部、川に捨てたので大店は何年か後に潰れ
鬼平が呟く「さすが”泥鰌”らしい”お務め”だ」と。
見事、息子の敵は討てたという結末。
今回のスペシャル2時間枠に
「おみね徳次郎」のエピソードを足している。
その、おみね役の酒井美紀がミスキャスト。
私の好きな女優で色気も演技力も充分だが
今回の悪女役には残念ながら向いてない
恐らく演出の吉田啓一郎に狂いが有ったのだろう。

前回の財津一郎の”泥鰌”は
彼らしい跳んだ演技が面白かったが、
石橋蓮司は意外にオーソドックスな役作りに
彼の役者としての熟成を感じた。
”鬼平”は歌舞伎の演目の様に
同じ原作でも違う役者と演出で楽しんでいるが
それも脇役の名優が、どんどん消えて行き
吉右衛門の”鬼平”も何時まで出来るのか寂しいものだ。

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