スノーピアサー(2013)
此の映画は日本では殆ど話題にもならなかった。
だいたいタイトルが何だか判らない。
漢字表記では「雪國列車」
これでは吉幾三か前川清の演歌と思われてしまう。
ところが、ところが此れが大変な作品なのだ。
韓国映画「殺人の追憶」「グエムル漢江の怪物」の監督
ホン・ジュノがアメリカとフランスを巻き込んで
製作したSFアクション映画なのだ。
80パーセント英語で撮られているから
殆ど韓国映画とは気付かない。
いや此のスケールと迫力は超一級のハリウッド映画並みだ。
地球温暖化を食い止めるべく散布された化学薬品により
全ての陸地が雪と氷の氷河期に成ってしまった近未来。
僅かに生き残った人間が、それ以前に作った永久燃料で走る
列車内で生活しているという”ノアの箱船列車”の物語だ。
とにかく鰻の寝床100匹分の様に繋がった此の列車が長〜〜〜い!
ドラマは最後尾で食料不足に喘ぐ下層階級の反乱から始まる。
彼等は列車の持ち主から家畜の様に管理されているのだが
その反乱軍のリーダーが仲間達と共に
車両ごとに配属されている軍隊を次々に打ち破り
”スパルタカス”の様に先頭車両へと向かう。
車両ごとに配属されている軍隊を次々に打ち破り
”スパルタカス”の様に先頭車両へと向かう。
車両は頑丈な厚い扉が付いていて
その扉を開けるのに、錠前師の韓国人父娘が登場する。
此の父娘を監督・ホン・ジュノの作品でお馴染み
「殺人の記憶」の親父、ソン・ガンホ
「殺人の記憶」の親父、ソン・ガンホ
「グエムル」の娘、コ・アソンが演じる。
此の父娘は薬物中毒で奇妙な行動を取り
此の父娘は薬物中毒で奇妙な行動を取り
それまで白人黒人だけの普通のSFアクション映画が
西洋人、東洋人入り乱れて不思議な世界へと発展する。
不思議なのは、それだけではない。
先頭に進むに連れ、そこに住む人々の
生活レベルは上がって行き
生活レベルは上がって行き
中流階級、上流階級と部屋は、どんどん豪華になり
細長〜い通路の先にはプールからキャバレーの娯楽施設
自然植物園に水族館、はたまた保育園から美容院まで
”豪華オリエント急行”よろしく設置されているのだ。
それは独裁政権の縦社会を、そのまま横に繋げた様な
いや、明らかに北朝鮮を連想させる構造だ。
「グエムル」で在韓進駐米軍の化学汚染から生まれた怪物で
米国を告発したホン・ジュノは、
此の作品では38度線の向こう側の国の独裁主義を
痛烈にカリカチュアしているのだ。
此の作品では38度線の向こう側の国の独裁主義を
痛烈にカリカチュアしているのだ。
だから軍隊の残虐性の描き方が半端ではない。
その指揮を執っているのがアカデミー賞女優ティルダ・スウィントン
(写真左端がティルダ、右端が韓国俳優2人)
ティルダは「ナルニア国・・・」の女王でお馴染みだが
彼女と判らないくらいメイクした冷血女ぶりは
怖さを通り越して、もう笑ってしまう。
先へ進むにつれ仲間を悉く虐殺され、それでも
やっと先頭車両に辿り着いたリーダーだが
やっと先頭車両に辿り着いたリーダーだが
そこには此の列車の生みの親であるウィルフォードが居る機関室があり
列車全てのエネルギーを彼がコントロールしているのだ。
此のウィルフォードを演じているのが名優エド・ハリス。
いかにも非情冷酷な感じが良くハマッている。
しかし此れから先は、見ていない人の為に明かさないでおこう。
古くはパトリック・マグーハンのTVシリーズ「プリズナーNo.6」
もしくはオーソン・ウェルズの異色作「審判」に描かれた
どんなに足掻いても逃れられない”カフカの悪夢”。
映画を観ている間,ずっと怖い夢にうなされてる様。
古くはパトリック・マグーハンのTVシリーズ「プリズナーNo.6」
もしくはオーソン・ウェルズの異色作「審判」に描かれた
どんなに足掻いても逃れられない”カフカの悪夢”。
映画を観ている間,ずっと怖い夢にうなされてる様。
此れだけ不条理な政治的寓話を盛り込み
各場面の映像のクオリティとC.G.の完成度の高さで
各場面の映像のクオリティとC.G.の完成度の高さで
超ド級のエンタテーメント・アクション映画に仕立て上げた
韓国人監督ホン・ジュノの非凡な才能に改めて驚く。
以前、ハリウッドで成功した外国人監督たちを取り上げたが
此のホン・ジュノも、その日は、そんなに遠く無いだろう。
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