2014年7月21日月曜日

森雅之(1911〜1973)
此の名優も忘れ難い。
作家を親に持つ俳優は芥川比呂志を始め少なく無いが
彼は有島武郎の息子。
それでも母は彼が5歳の時、結核で亡くなり
父は不倫相手と心中という悲惨な生い立ちだ。
早くから俳優を目指し1935年に文学座の結成に加わる。
舞台の演技も評価されたが映画は吉村公三郎の
「安城家の舞踏会」で注目される。
1950年代は溝口健二の「雨月物語」黒澤明の「羅生門」
成瀬巳喜男の「浮雲」と彼の主演作が
カンヌ、ベネチア、ベルリンと海外映画祭全ての賞を取り
名実共に日本を代表する俳優となった。
競演の多かった三船敏郎は”世界のミフネ”として
外国映画に多く出演したが
彼は主に日本で映画やテレビ、新劇の舞台で活躍した。
端正で知的な二枚目の顔立ちだが、その生い立ちからか
独特な翳りが有り、歳を重ねて演技に渋さを増し
「女が階段を上る時」「おとうと」「武士道残酷物語」と
日本映画の名作と云われる映画に見事な足跡を残している。
私の記憶に鮮やかなのは、やはり成瀬の「浮雲」
高峰秀子との、もつれた男女関係の果てを
頼りなくも優しい男の情愛として演じ、存在感があった
此の作品を日本恋愛映画のBEST-1に選ぶ人も多い。
それと溝口の「雨月物語」
京マチ子演じる美貌の幽霊に取り憑かれる
戦国時代の陶工の放蕩と末路の哀れさを見事に演じた。
撮影現場に居た田中絹代に依ればラスト・カットの彼の演技に
感動した監督・溝口は思わず駆け寄り煙草を勧めたと。

こうして見ると、彼は何故か”女”に惑わされる役が多い。
それは彼の容姿に日本人離れした
”男の色気”と”孤独の影”が備わっていたからであろう。
その資質に日本映画の名匠たちが魅せられ
数々の名作を生み出したと思われる。

そして彼自身も、亡くなった父親同様
愛を求め、恋多き人生だったのが、とても興味深い。

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