2013年12月23日月曜日

ガタカ (1997)
近未来映画である。
SF映画として「ブレード・ランナー」と同じテーマを持っている。
先の「ブレード・・」ではレプリカントが
自分の寿命を知っていた様に
此の映画で主人公は普通の人間だが直後の遺伝子分析で
寿命も生まれたときから判っている。
近未来では優勢遺伝子操作をされた
完璧な人間(適正者)と、そうでない人間(不適正者)に
分けられ、後者は社会的な差別を受ける。
しかし主人公は子供の頃から
適正者しか成れない宇宙飛行士に憧れ
”ガタカ”という宇宙飛行士養成所に潜り込み
事故で下半身不随の男のDNAを借りて
適正者に成り済まし飛行士候補の訓練を受ける。

監督と脚本を此れが初作品のアンドリュー・ニコル
その主人公をイーサン・ホーク
DNAを貸す男をジュード・ロウ
主人公の”適正”を怪しみながらも、
主人公に惹かれていく女訓練生を
ユマ・サーマンが演じる。
まずキャスティングが皆ハマッていて、
それぞれにリアルな存在感が有る。
そして巨大な未来のNASAと思しき航空宇宙局の
ロケ・セットのスケールに驚かされる。
幾つかの既成の現代モダン建築物を利用したのだろうが
画面隅々まで行き届いたカメラ・ワークの良さも有って
SFというよりカフカの不条理劇の様な効果が生まれている。
そう此のストーリーは不条理劇なのだ。
人は生まれながらにして不平等であり
頭脳や肉体的に優秀な者だけが生き残れるという
理不尽な論理に歯向かう男の話だ。
その男には兄弟が居て、その弟は適正者として生まれる。
此の兄弟が小さい時から聖書の”カインとアベル”の様に
競って育ち、ラストに再び対決する。
果たしてどちらが強いか?優性遺伝操作しているのだから
結果は判っているはずなのだが、真実はそれだけでは無いと
監督は云いたいのだろう。
いや、それより生物学的に宇宙の塵から地球が生まれ
その地球の海から生命が誕生した事を、此の監督は
様々なシーンで伝えようとしている。
主人公の兄弟が裸で海に入り肉体的な強さを泳いで競うのは
殆どスペルマ(精子)が先を急ぐ様に思える。
そして宇宙の彼方へと飛び立つ主人公は
正に塵に帰るようだ・・・。
そんなアナロジーを感じさせる映像はともかく
現実的に、もう人間の遺伝子操作は始まっている
しかし優秀なものだけの社会は
さぞかし詰まらない世界に成るだろう。

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