ジャンゴ・繋がれざる者(2013)
タランティーノは、「キル・ビル」のイイ加減な映画構成に
飽きれ果ててから、私は、もう相手にしないと思っていたが
此のキャスティングに食指が動いてしまった。
果たして、その出来は?◎
同時に観たスピルズバーグの「リンカーン」と同じテーマ
黒人奴隷解放映画として一緒くたにしては何だが
遥かにコチラの方が面白い。
今や優等生に成ったスピルズバーグが議会制民主主義で
黒人奴隷解放案を通すまでの、まどろっこしい駆け引きを
だらだら描くより
当事者の黒人奴隷ガンマンが白人の奴隷売買業者を
バンバン撃ち殺す方が手っ取り早い。
それもマカロニ・ウエスタンの手法を真似して。
イタリアの監督セルジオ・レオーネが始めたそれは
抑圧され虐殺された人間の怨念に満ちた復讐の構造。
此の映画でも、ギリギリ最後まで主人公は、いたぶられる。
それはハリウッドが、取り上げ憎かった米国の負の歴史でもある。
「ルーツ」「カラー・パープル」「アミスタッド」でも当の黒人達は
俺たちの受けた鞭の痛みは、そんなもんじゃ無えぜと思っていたろう。
黒人同士を戦わせ、殺させ、犬に食わせた白人達の過去を
タランティーノが容赦なく此れでもかと暴くのだ。
彼のヴァイオレンス趣味は、その主題が
リアルな社会性と重なる時、爆発的な効果を生む。
「レザボア・ドッグ」や「パルプ・フィクション」と
現代アメリカの裏社会を描いた作品が成功したのは
それが彼が誰よりも良く知っている世界だからだ。
だから彼がテーマの進むべき方向を見誤らず突っ走れば
雑な演出も、模倣(パクリ)も彼のスタイルとして許せるのだ。
とにかく此の映画では、それら全てが成功している。
主演のジェイミー・フォックスは映画「レイ」で
麻薬中毒で女たらしのレイ・チャールスを演じている。
その太々しさは黒人奴隷でありながら
馬に乗り白人を見下す男にピッタリ。
その彼をサポートするドイツ人医師役は
前作「イングロリアス・バスターズ」で
アカデミー助演賞を取ったクリストフ・ヴァルツ。
此のインテリ・ドイツ人の役を作った処が
脚本家タランティーノの技だろう。
白と黒に玉虫色と敵味方曖昧で最後まで先が読めない。
しかも黒人でありながらも白人に媚び
奴隷制度の上に立ち、甘い汁を吸っている酷い奴。
此れを名優サミュエル・ジャクソンが実に憎々しく演じる。
憎々しいと云えば、まだアイドルの面影も有る
レオナルド・デカプリオにまで狂気の奴隷売買業者を
演らせてしまうのだからタランティ−ノも割り切りが良い。
デカプリオは、ジョン・トラボルタやブルース・ウィルスが
「レザボア・・・」でスランプから息を吹き返したのを見習ったか?
かねがね、映画は良いシナリオとキャスティングと思う私は
タランティーノの作戦に、まんまと嵌められたようだ。
何より私の大好きなマカロニ・ウエスタン映画音楽の数々が
エンリオ・モリコーネ、リズ・オルトラーニと
♪ジャンゴ〜と
次から次へと照れもせず流れるのだから・・・。
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