警察日記(1955)
山田洋次が選ぶ日本の喜劇100選で放映されたこの映画は
喜劇というには相応しく無い様に思われる。
そこで描かれているのは日本の悲劇と云うべきものだから。
戦後の地方、東北の片田舎の警察署の出来事を
タイトル通り”警察日記”として綴った
プロレタリア文学の伊藤永之介の原作。
脚色したのは脚本家としては寡作の井手俊郎
それでも成瀬巳喜男の「めし」「流れる」
川島雄三の「州崎パラダイス赤信号」と名画に足跡を残した。
それでも成瀬巳喜男の「めし」「流れる」
川島雄三の「州崎パラダイス赤信号」と名画に足跡を残した。
監督は久松静児。
戦後の日活の文芸路線と云われる作品
「おふくろ」「渡り鳥いつ帰る」「月夜の傘」「雑居家族」
で名を挙げ、東宝では森繁久弥と組んで
「駅前シリーズ」をヒットさせた。
そう此の映画はタイトル・ロールでは森繁が主役なのだが
彼が目立たない。それが此の映画を成功させている。
彼の臭い演技がまだ出て来ず
警察署内の署員達のアンサンブルが旨く行っている。
上の写真に写っている若い警官が宍戸錠(デビュー作)に
殿山泰司(だらしない殿山節が出ていなくて生真面目で良い)
他に署長に三島雅夫(その古狸ぶりが絶品!)
主任に織田政雄(日本映画で彼の存在は目立たないが大きい)
そして、まだ初々しい三国連太郎(佐藤浩市そっくり)の
淡い恋心は此の映画に甘い余韻を残している。
しかし此の映画の主役は何と云っても子役・二木てるみ(6歳!)
此の子の可愛さと健気(けなげ)さは
日本映画史上、子役としてダントツの素晴らしさだ。
上の写真の右下にも居るが、その演技は自然そのもの
そこに居るだけで、捨て子の哀しみを姿で表現している。
いわさき・ちひろの絵本から抜け出て来た様な愛くるしさ。
黒澤明の「七人の侍」に3歳でデビューしたらしいが
多分、村の子供たちの一人として出ていたのだろう。
その後、再び黒沢の「赤ひげ」の岡場所で虐待された娘の演技で
ブルーリボン女優助演賞を最年少(16歳)で取っている。
そう云えば此の映画には他にも名脇役と呼ばれる
俳優が沢山出演している。
ベテランの杉村春子、沢村貞子、千石規子そして
小田切みき、岩崎加根子
男優では左卜伝、伊藤雄之助、多々良純、東野英治郎
いずれも東北の地に根を生やしている様な人物像を演じて
可笑しくて優しくて哀しくて
こんな人、昔は近所に居たな・・・と懐かしさを感じる。
懐かしいといえば馬喰役の伊藤雄之助が好きだった彼女が
別の男に嫁ぎ、その嫁入り道具を馬車で男の家に運び
振る舞い酒で酔っぱらい、帰り道、馬にも置いて行かれ
道路に寝ている田舎道に浮かぶ月の風景は
いつかか何処かで自分も見たような”デジャヴ”の様。
その凄い映像を撮ったのは後に今村昌平作品や日活ロマンポルノで
活躍したカメラマン姫田真佐久。
そして東北民謡の”会津磐梯山”や"馬子唄”を
効果的に使っていたのは音楽の団伊玖磨と、スタッフは
此の頃の日本映画の”力”を感じさせるベスト・メンバーだ。
それにしても此の映画は喜劇と呼ぶには哀しすぎる。
今では考えられない戦後日本での貧困から出た”捨て子”に”人身売買”
冒頭とラストに出て来る”嫁入り”風景の、なんと切ないことか。
しかし見終わった後、心に残る”人の温かさ”は
時代を超え、此の映画が今の日本に欠けている何か?
を提示している様にも思える。
子沢山の巡査の森繁が捨て子の二木てるみを家に連れて帰り
「5人も6人も一緒だ」と呟くように
悲惨な現実をユーモアという笑いで乗り越えて来た先人達の知恵
それこそが又、山田洋次が敢えて此の映画を喜劇として
取り上げた理由だろう。
上の写真に写っている若い警官が宍戸錠(デビュー作)に
殿山泰司(だらしない殿山節が出ていなくて生真面目で良い)
他に署長に三島雅夫(その古狸ぶりが絶品!)
主任に織田政雄(日本映画で彼の存在は目立たないが大きい)
そして、まだ初々しい三国連太郎(佐藤浩市そっくり)の
淡い恋心は此の映画に甘い余韻を残している。
しかし此の映画の主役は何と云っても子役・二木てるみ(6歳!)
此の子の可愛さと健気(けなげ)さは
日本映画史上、子役としてダントツの素晴らしさだ。
上の写真の右下にも居るが、その演技は自然そのもの
そこに居るだけで、捨て子の哀しみを姿で表現している。
いわさき・ちひろの絵本から抜け出て来た様な愛くるしさ。
黒澤明の「七人の侍」に3歳でデビューしたらしいが
多分、村の子供たちの一人として出ていたのだろう。
その後、再び黒沢の「赤ひげ」の岡場所で虐待された娘の演技で
ブルーリボン女優助演賞を最年少(16歳)で取っている。
そう云えば此の映画には他にも名脇役と呼ばれる
俳優が沢山出演している。
ベテランの杉村春子、沢村貞子、千石規子そして
小田切みき、岩崎加根子
男優では左卜伝、伊藤雄之助、多々良純、東野英治郎
いずれも東北の地に根を生やしている様な人物像を演じて
可笑しくて優しくて哀しくて
こんな人、昔は近所に居たな・・・と懐かしさを感じる。
懐かしいといえば馬喰役の伊藤雄之助が好きだった彼女が
別の男に嫁ぎ、その嫁入り道具を馬車で男の家に運び
振る舞い酒で酔っぱらい、帰り道、馬にも置いて行かれ
道路に寝ている田舎道に浮かぶ月の風景は
いつかか何処かで自分も見たような”デジャヴ”の様。
その凄い映像を撮ったのは後に今村昌平作品や日活ロマンポルノで
活躍したカメラマン姫田真佐久。
そして東北民謡の”会津磐梯山”や"馬子唄”を
効果的に使っていたのは音楽の団伊玖磨と、スタッフは
此の頃の日本映画の”力”を感じさせるベスト・メンバーだ。
それにしても此の映画は喜劇と呼ぶには哀しすぎる。
今では考えられない戦後日本での貧困から出た”捨て子”に”人身売買”
冒頭とラストに出て来る”嫁入り”風景の、なんと切ないことか。
しかし見終わった後、心に残る”人の温かさ”は
時代を超え、此の映画が今の日本に欠けている何か?
を提示している様にも思える。
子沢山の巡査の森繁が捨て子の二木てるみを家に連れて帰り
「5人も6人も一緒だ」と呟くように
悲惨な現実をユーモアという笑いで乗り越えて来た先人達の知恵
それこそが又、山田洋次が敢えて此の映画を喜劇として
取り上げた理由だろう。
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