「コルドラへの道」(1959):ロバート・ロッセン監督作品
ロバート・ロッセンと言えばポール・ニューマンの「ハスラー」の監督として有名だが
此れはその一つ前の作品。
タイトルを読み間違え”コロラドへの道”という西部劇だと。
しかし内容はだいぶ違うものであった。
場所はメキシコとの国境沿い。
パンチョ・ビラ率いるメキシコの反乱軍が農場に立て篭もっているのを
アメリカの騎兵隊が奇襲攻撃で攻略する戦闘場面から始まる。
この戦闘態勢が騎馬隊1000人余りが一列に並び、
砦と化した農場へ攻め込む時代遅れな戦法のスペクタクル。
多大な犠牲者が出たものの、砦攻略に成功したした騎兵隊軍は
ゲイリー・クーパー扮する少尉に反乱軍に協力した女農場主を
非国民としてコロドラへ輸送する計画を立てる。
それも、その戦闘で功績を上げた兵士7人を選び護衛させる。
彼らを英雄として表彰し欧州への参戦気運を盛り上げようというのだ。
かなり強引な展開だが此れには脚本に自ら参加している監督
ロバート・ロッセンの”過去”が関係している。
彼は1950年代のハリウッドの赤狩りで映画界を一度追放されている。
ギリシャに逃げたジュール・ダッシンや英国に活動の場を移した
監督ジョセ・ロージーと同じだ。
ただ彼は海外に拠点を作れず不遇に耐えかねて”転向”してしまった。
非米活動委員会で共産主義者の仲間の名前を証言してしまったのだ。
その過去が此の映画には強く反映している。
先ず、護衛を命ぜられた兵士7人は皆、表彰されるのを良しとしない。
彼らも、それぞれ”過去”があり公の場に英雄として立たされては都合が悪いのだ。
中の一人など殺人を犯して逃亡の隠れ蓑として騎兵隊に紛れ込んでいた。
そして女農場主を凶暴な兵士から守る筈の少尉ゲイリー・クーパーも
実は以前の戦さで敵前逃亡ならぬ、敵の攻撃から逃れるため、
排水溝に隠れて居た臆病者という事実が兵士たちに暴かれてしまう。
護衛の途中、反乱軍に襲われ馬を手放し、砂漠を死の行軍となった兵士たちの欲望は、
むき出しになり女農場主を守ろうとする少尉に誰一人として従わない。
果たして彼らは目的地ゴルドラへ辿り着くことが出来るのか?
此の映画のテーマは”過去の自分への借りを如何に返すか?”
確か俳優ゲイリー・クーパーも先の非米活動委員会で
仲間の俳優を売った過去があった筈。複雑な想いで此の映画に参加して居たろう。
そんな訳で此の映画、痛快な西部劇では無く重い人間ドラマであった。
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