剣(1964): 三隅研次監督作品
大映の2枚看板、カツライスとして勝新太郎と市川雷蔵はライバルであった。
長谷川一夫の後を追い、白塗りの2枚目でリードしたのは雷蔵だが、
勝新は"座頭市"で巻き返した。
発表されたばかりの三島由紀夫の原作を雷蔵が是非にと
会社に持ち込んだ企画である。
主演演技賞を総なめにした彼は6年後、
もう一度勝新に差を付けようと挑戦した訳である。
「炎上」で坊主頭にした雷蔵は此の時、何歳だったのだろう。
大学3年あたり、無化粧で見事にそれらしく演じている。
話は三島由紀夫の思想そのものを映画にしたような作り。
子供の時から題名通り"剣"の道を極めようと剣道に打ち込む大学剣道部の青年が、
剣道部主将に指名され、世俗の誘惑に負けず、
部員への指導と合宿に挫折して自ら命を断つ話だ。
それは市ヶ谷の防衛庁で割腹自殺した三島由紀夫と重なる。
映画に先駆け、雷蔵と三島は共に剣道部の稽古を見学したと言う。
市川雷蔵は
歌舞伎俳優の養子を2度も経験し、
そこに自分の居場所は無いと映画俳優に転身した。
その数奇な生い立ちに彼の演技に影の部分を指摘する人も多いが、
何よりそれを超えた清々しさは三島由紀夫も絶賛している。
此の映画でも、それは謎の微笑として最期まで余韻となる。
兎に角、三島&雷蔵研究には欠かせない作品だ
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