「日本侠客伝・昇り竜」(1970):山下耕作監督作品
此のシリーズは東映が中村錦之助や大川橋蔵などの
時代劇映画の人気が無くなり、鶴田浩二の「飛車角」のヒットに
時代を昭和に移したヤクザ映画を企画したもの。
監督マキノ雅弘がその”飛車角”の宮川役の高倉健を抜擢して
始めたのが日本侠客伝。
高倉健は、それまで美空ひばりの相手役や現代ギャングをスマートに
演じて来たが、刀(ドス)を持っても野球のバットの様に扱い
監督マキノは頭を抱えたが彼は流石の日本映画の祖
シリーズを重ねる内に高倉健も様(さま)になって来て
結果的に11作も続くヒットシリーズとなった。
しかし、それだけ続くと映画としてマンネリになって来たので
8作目にして監督は山下耕作へ交代、
話もネタが無くなり火野葦平の「花と竜」を元に笠原和夫が
リメイクした・・・というのは、先に山下耕作は
錦之助で「花と竜」(1965)を撮ったばかり、それを同じ登場人物で
主役の玉井金五郎役に高倉健に、緋牡丹博徒がヒットした
藤純子を、お京役で組ませると言う大胆な脚本。
しかも、そのお京は女ながらに刺青師と言う設定。
賭場で出会った高倉健と藤純子は、お互いにひと目で惹かれ合う。
男盛りの健さんと、女盛りの藤純子の目線のやりとりは
凄まじい濡れ場と成っている。
そして、それ以上に緋牡丹のお竜が健さんの身体に墨を入れる
場面の艶かしさと言ったら・・・。
”花と竜”の原作を読んだ方は此の話が沖仲仕の組合設立の
労働争議なのをご存知だろうが、
片岡千恵蔵や荒木道子と言った地元のヤクザが絡み合い
お決まりの手打ち式やらをホゴにする悪役の天津敏の裏切りに
それは無いだろうと、いつもなら鶴田浩二はラストの殴り込みの
お供しましょうだが、今回は健さん単独で乗り込み
切られた背中に昇り竜。
(ここからネタバレ)
当時、東映の親分(ボス)だった片岡千恵蔵が仕切り
その彫物を彫ったお京さんが、お前にひと目会いたいと。
駆けつけた健さんの腕の中で息を引き取ると言うラスト。
うーん、当時の東映撮影所の人間関係が良く分かる映画だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿