「グラマ島の誘惑」(1956)
噂には聞いていた川島雄三監督の怪作をやっとみた。
いやはや凄いのなんの。
太平洋戦争末期の”アナタハンの女王事件”がモチーフの
飯沢匡の原作「椰子と女」を川島雄三が脚本演出したもの。
まず、此の事件そのものを皆さんご存知ないだろう。
京都弁の人を呼ぶ様な名前の島が現実に存在することが不思議だが
事件はもっと摩訶不思議。
事件はもっと摩訶不思議。
戦争末期、南海の孤島に残された男31人と1人の女。
その1人の女を男31人がラグビーのボールの様に奪い合い
5年の間に行方不明を含め13人が死亡したというもの。
さぞかし壮絶で、おぞましい情景だったと思うが。
此の映画では男女の比率は逆になり
男3人に女が9人とまあ、男が考える”ロマン”にしている。
しかし川島雄三が仕掛けたのは
森繁久弥、フランキー界の”皇族”に桂小金治の”軍人”
そして女たちの構成が従軍慰安婦として自ら望んで島に来た
吉原の遣り手婆あ(浪花千栄子)と娼婦(轟夕起子、春川ますみ、他2人)に
インテリらしき従軍詩人(淡路恵子)と画家(岸田今日子)。
それに八千草薫の戦争未亡人。
吉原の遣り手婆あ(浪花千栄子)と娼婦(轟夕起子、春川ますみ、他2人)に
インテリらしき従軍詩人(淡路恵子)と画家(岸田今日子)。
それに八千草薫の戦争未亡人。
娼婦の中には少し頭の弱い娘(宮城まり子)も入っている。
此の娘を、いつのまにか孕ませてしまうのが
昭和天皇の仕草そっくりな森繁久弥(戦争前なら不敬罪で投獄だ)
森繁の芝居も此の時期は偉そうではなくて
当時、彼の真似をしたという渥美清に似て軽妙。
当時、彼の真似をしたという渥美清に似て軽妙。
フランキーと森繁のやりとりは社長シリーズ、駅前シリーズの路線が
此処で引かれた事がわかる。
此処で引かれた事がわかる。
此れに現地のチャモロ族の男(三橋達也)が1人。
そんな彼らのドタバタを川島雄三はアナクロな"コマ落とし”を使い
今観れば吉本の芸人が監督した映画の様で実に野暮ったい。
とても「幕末太陽傳」の名監督とは思えないほど下手くそだ。
それでも中身は”天皇制批判””核実験””女性解放”と
やたらアナーキーで盛り沢山。
よくぞ東宝株式会社が作らせたものだ。
そんな訳でテーマは重いが完成度は軽い。
途中で感じたのは川島雄三の弟子・今村昌平の
「神々の深き欲望」(1968)との共通点。
南海の孤島アナタハン島は八重山諸島のクラゲ島。
頭の弱い宮城まり子が沖縄の服を着ていたが、
それは頭の弱い沖山秀子に受け継がれる。
さすがに天皇制は家長制へと変えているが
古い因習に縛られながらも男女の深き欲望がメラメラと燃え盛る。
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