2019年1月24日木曜日

デトロイト(2017)
此の作品の監督キャサリン・ビクローは
女性で初めてオスカーを手にした監督である。
その年の最終候補相手は「アバター」の監督ジェームス・キャメロン。
ご存知のように彼は元・夫で有る。
それに勝った作品がイラク戦争の爆弾処理班を映画にした
「ハートロッカー」(2008)
私は此れを観た時、心臓が早打ちして
途中で映画館を出ざるを得なかった。
思えばあのあたりから私は不整脈になった様だ。
それはともかく
此の監督の作品は押し並べて緊張感が普通ではない。
まるで現場に居合わせたかの様に観客を錯覚させる演出力がある。
此の映画「デトロイト」も、例外では無い。どこまでがドキュメンタリーで
何処が彼女が演出した場面かプロの私が見ても、その差は全く判らない・・・
というより彼女の撮ったリアルな映像に、
当人かと見紛う様なキャスティングの良さも相まって
観客は1967年のデトロイト暴動に巻き込まれてしまう。
私が此の監督の作品を最初に観たのはTVオンエアで、
痩せた女優ジェレミー・リー・カティスが新米警官になる
「ブルー・スティール」(1989)
そのマッチョ加減は、とても女とは思えないシュワちゃん並みのキャラであった。
そしてキアヌ・リーブがサーファーに化けて
銀行強盗を追う警官になった「ハート・ブルー」(1991)
サーフィンの魅力に、追う者と追われる者の男の意地を絡ませた名画だ。
この辺りから私は彼女の監督としての才能に、
おっ此の人は!と非凡なものを感じた。
そして私を心臓病にした「ハートロッカー」
そう、此の「デトロイト」も人種差別警官の黒人への尋問と称した
リンチは気持ち悪くなるほどのおぞましさだ。
歴史の中に埋もれたアルジェ・モーテル事件
現場に居合わせた人々の証言を元に構成したもの。
ただし此の作品は事件の前の被害者たちの生活も丁寧に追って居て
デトロイト=モータウン=ソウル・ミュージックそしてミュージシャン。
シュプリームス等のステージが再現されて居て、
その映像がミュージック・ビデオの様に美しく、
私の様なソウルファンには堪らない。
でも、被害者の一人は、あのドラマティックスのメンバーだったのだ。
その彼が、アルジェ・モーテル事件の裁判で証言するも
3人も黒人が殺されたというのに、白人が大多数を占める陪審員は
その犯人たる警官たちを無罪にしてしまう判決に
「もう白人に儲けさせたり踊らされるのは御免だ!」と
ソウル・シンガーを辞めてしまう切ない幕切れ。
その悔しさは、今でもアメリカは何も変わっちゃいないのだと
50年経って敢えて此の事件を映画化した監督キャサリンビグローは
完全主義者と言われる。
豊富なカメラアングルにテンポの良い編集には沢山の素材が必要。
だからハリウッドでは監督が撮影現場でシツコク粘る事を
スタッフ達はキャサリン状態と呼ぶとか?
そんな彼女は緻密な映像構成だけで無く、此の作品ではソウルという
オマケオカズを入れる余裕が出て来た。
それがキャサリン監督ファンの心臓の弱い私には喜ばしい。




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