2017年5月17日水曜日

風の武士 (1963)
中村錦之助の股旅物や緋牡丹博徒の
スタイリッシュな映像で映画ファンでも
マニアの多い加藤泰作品だ。
「真田風雲録」という異色作の直後、さらに
司馬遼太郎の新聞連載小説の映画化という事で
どんなものになるかと期待した。
大川橋蔵という超甘い二枚目をギリギリの線で
上手に使い、楽しめる。
司馬遼太郎にしては現実離れした幻想的な物語。
徳川末期、”安羅井国”という紀伊の山奥にある
平家の落人部落の砂金を巡り、紀州藩と幕府が
その争奪戦を繰り広げる。
それに巻き込まれるのが主人公の名張信蔵
彼は伊賀忍者の末裔、幕府の御庭番の次男坊で冷や飯食い。
町道場の娘(桜町弘子)や酒場の女将(久保菜穂子)に
二股かけ、ノホホンと暮らしていたが
通う道場の主(宮口精二)が何者かの一団に襲われ
娘も拐われてしまう。
時を同じくして彼は老中から呼び出され、隠密として
先の”安羅井国”の実態を探る命をを受ける。
道場主が持っていた絵巻物は、そこへ行く案内地図。
それと一緒に拐われた娘、実は
その”安羅井国”の後継の姫だったのである。
紀州藩に寝返った道場仲間(大木実)の道案内で
その隠れ里に向かう紀州藩と、それを追う主人公の壮絶な戦い。
それらは背景が加藤泰の独特な美意識でフレームに収められ
木下忠司の音楽が、並みの時代劇とは一味違う叙情性を感じさせる。
一味違うといえばラスト近く、主人公とお姫様の濡れ場も
大川橋蔵映画とは思えないほど濃厚で官能的に描かれ
さすが加藤泰作品と納得させられる。
彼の作品コレクションには欠かせない1本だろう。

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