「野獣暁に死す」(1968)
日本の俳優・仲代達矢がイタリアに呼ばれて
マカロニウエスタンに出演した事は
当時話題になったが、その作品を見逃していた。
その経緯を調べたら予想通り
クロサワの「用心棒」のリメイクで
”マカロニウエスタン”が ブレイクしたのに当て込んで
ベルトウッチの「殺し」アントニオーニの「赤い砂漠」
フランチェスコ・ロージの「真実の瞬間」の
イタリアの名プロデューサー、アントニオ・チェルブィが
それなら「用心棒」の悪役を使ったら良いでないのと
彼にオファーしたらしい。
既に「荒野の用心棒」から4年も経っていて
イタリア映画界は”荒野”と用心棒”だらけ
頭の良いプロデューサーが考えつきそうな事だ。
しかし仲代は岡本喜八の「斬る」が控えていて
スケジュールが無い。
それをアントリオが、出番を減らしても是非にと
敵役の方へ。
そして大体イタリア映画は吹き替えが多いので
仲代も、イタリア語をちゃんと話さなくとも良いとの条件に
西部劇は少年時代からの憧れとOKしたらしい。
それで此の映画、出来はどうかというと、そんなに悪く無い。
日本人ばなれした仲代の彫りの深い顔は
メキシコとネイティブ・インディアンのハーフと
説明がつけば、何の違和感も無い。
三船敏郎がメキシコ映画に出た「価値ある男」と同じで
モンゴロイド系は南北アメリカ大陸の原住民なのだ。
ストーリーは
黒澤明の「七人の侍」の導入部の人集めに
セルジオ・レオーネ以来のマカロニの定番
復讐物の要素で、ソツなくて観られ
仲代のギョロ目の悪党は”用心棒”のキャラそのまま。
サービスに長い刀のアクションや
乗馬の巧さは”時代劇”仕込み、流石に決まっている。
敵役が強いほど映画は面白くなるという定説通り。
しかし他の主役はフランコ・ネロもどきで
仲代の鋭い目のアップに対抗できない。
だから最後の対決も、やたら仲代の死に様が格好良すぎで
映画としては肩透かし。
もし仲代が主役をやっていたら
今頃、彼もクリント・イースウッドのような西部劇の大スターに。
そして国際スターに成っていたかも?と。
それでもTATUYA NAKADAIの名は、アカデミー賞
カンヌ、ベネチア、ベルリンと世界三大映画祭の全てで
受賞した森雅之、山形勲と並ぶ4冠を制した国際的な名優
現役、最後の一人なのだ。
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