2016年5月5日木曜日

グランド・フィナーレ (2015)
原題は"Youth - La Giovinezza”  若さとでも
訳せば映画の内容に合うだろうか?
しかし主役の俳優マイケル・ケインもハーベイ・カイテルも
若さとは程遠い老人の親友。
此の二人がスイスの温泉ホテルに療養に来ている話だ。
(上の映画ポスターが出来過ぎるほど判り易い)
物語上で、マイケルは楽曲「シンプル・ソング」の作曲者として
英国の女王陛下にコンサートの指揮を依頼されて居る程の有名人。
片やハーベイは若いブレーン達と此のホテルで
新作の映画のシナリオを書き上げようとしている有名映画監督。
現在、映画界もどんどん名優達が亡くなって
まだ此の二人、生きていたか?と思う程の高齢俳優同士だが
その燻し銀の様な演技合戦が、此の映画の見ものだ。
長い付き合いと思われる二人の関係は
マイケルの娘がハーベイの息子と結婚している事から明らか。
その娘息子夫婦の亀裂と彼の最後の仕事。
果たして作曲家は女王陛下の依頼を断る理由は何か?
そして映画監督はシナリオが完成したものの
ヒロイン役の女優ジェーン・フォンダが
突然やって来て映画出演を拒否と話は展開する。
此のジェーン・フォンダの老女優ぶりが凄い!
私にとって、ロジエ・ヴァデイムの映画「バーバレラ」の
ミューズ=女神だった彼女の面影は何処にも無く
皺と整形を厚化粧で誤摩化しているから
登場しても台詞を言うまで、ジェーンと判らなかった。
まったく出演俳優のキャスティング自体が
彼等のドキュメンタリー映画の態を成しているのだ。
此の監督パオロ・ソレンティーノは
ラストに”監督フランチェスコ・ロージ”に捧ぐ
とタイトルを出していたが
実はフェデリコ・フェリーニ監督の
「8 1/2」や「フレッド&ジンジャー」の引用が多く見られ
大先輩へ精一杯のオマージュを捧げている。
それでも現在のイタリア映画の映像技術の粋を集めた
此の高級ホテルの撮影など、息を呑むほど美しい。
美しいと言えば、完璧なプロポーションの
ミス・コンの優勝者との混浴に
「まさに女神は居る!」と見とれる主役の老人コンビが可笑しい。
可笑しいと言えば、会話の無い夫婦客のどちらが先に声を出すか?
の賭けをする老人コンビがホテルの外の森の中で
情交する、その妻の快楽の絶叫を二人が目撃するのも笑える。

”エロス&タナトス=性と死”は隣り合わせ
此の映画の主題もそれだ。
映画監督は愛するヒロインの出演辞退に
生きる望みを失くし、自ら命を絶つ。
一方、作曲家はコンサートの断り続けた理由の1つ
妻への想いをベニスで確認する。
ベニスの水没したサンマルコ広場から浮き上がる
マイケル・ケインの夢の映像が圧巻・・・と
だいぶ今回はネタバレというか見せ場をバラしてしまったが
推理映画では無いので、悪しからず。

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