エネミーライン(2001)
「新・映像の世紀」で第二次世界大戦以来
今、世界は大国が利権を得るため
あるいは武器を売るため、小国に代理戦争をさせている
現実を見せていたが
此の映画も大国が上で糸を操り、ボスニアを舞台に
ポシニャク人、クロアチア人とセルビア人を三つ巴で戦わせた
所謂、ボスニア紛争を描いている。
それも、ようやく停戦へと向かっている時期
アドリア海の米国航空母艦から飛び立った偵察機が
セルビア人武装勢力による攻撃で撃墜され
米国海軍のWSO(兵器管制士官)はパラシュートで脱出
敵陣の真っただ中に着陸、果たして無事生還出来るのか?
という戦争アクション映画である。
驚く程、その航空母艦や、その戦闘機が
リアルに描写されているので、C.G.と思いきや全部、本物だと。
ガン・マニアなら登場する武器や戦車で
背後にいる大国が解る筈。
恐らく映画の内容が米軍の戦意高揚プロパガンダに
もってこいの内容なので、ハリウッドに米海軍が
全面的に協力したのだろう。
まず主人公だが、海軍に入ったものの
航空母艦の退屈な生活に飽き飽きして、除隊をすべく
辞表を出した処、クリスマスを前に
ボスニアの上空の偵察を命ぜられる。
その命令では非武装地帯だけを飛ぶ筈が、彼は
レーダーに映った影に興味を持ち、危険な地域に侵入してしまう。
そして地上の異変に気付き、上空から撮影をしていた時
セルビア軍から撃墜されたと云う訳である。
此のミサイルを攻撃をかわす戦闘機のシーンは
「STAR-WARS」以上のド迫力!
合成と編集の巧さが光る。
一緒に戦闘機に乗っていたナビゲーターは捕虜に成る筈が
あっけなく処刑され、通信場所を探していた彼だけ
辛うじて生き延びる。
航空母艦の司令官と彼は連絡は取れたものの
指定の地点まで移動しろとの命令が下る。
周りは敵だらけ”ビハンド・エネミー・ライン”である。
普通、こう云う映画はシュワちゃんか、スターローン等の
マッチョな奴が演じる筈だが
此の映画はオーエン・ウィルソンという
ごくごく普通の俳優、でも此の後、
ウェス・アンダーソンの「ライフ・アクアティック」や
ウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」と
売れっ子に成った位の実力演技派。
その彼を執拗に追いかけるセルビア軍の1人の傭兵。
”敵役は強い方が映画は面白く成る”の定説通り
コイツが、やたら凄くてサスペンスを盛り上げる。
蜘蛛の糸の様に張りめぐされた地雷をかいくぐり、泥水を這いずり、
まさにTVゲームの様に戦場をひたすら逃げ回るのである。
それも過去の戦場ではなく今の戦場をである。
BSのディカバリー・チャンネルで現代の戦闘兵器の紹介を
良くやっているが、科学が進んで今や宇宙の彼方の
人工衛星から、ロックして地上の人間を狙う事も出来るのだ。
米軍は、そんな通信技術も使って彼を救おうとする。
しかし、和平を望むNATOの政治的な駆け引きで
危うく彼は見殺しにされそうに成る。
そこで頑張るのが、航空母艦の司令官ジーン・ハックマン。
此のところ悪役ばかりさせられ久しぶりの善い役
やはり此の名優の存在感は貴重だ。
クビを承知でNATOの命令に逆らい、彼をヘリで救出に向かう。
まだ地上で彼はセルビアの戦車隊とスナイパーに追われ
007にも勝るとも劣らないサスペンスの連続。
セルビア軍が何故か彼を執拗に追うのは、上空から見た
ボスニア人大量虐殺を彼に見られたからだ。
その事に気付いた主人公は、墜落現場に戻り
証拠写真のディスクを発見・・・
しかし、そこに又スナイパーの銃口が
そしてセルビアの戦車隊が刻々と迫って・・・と
この先はネタばれになるから書けない。
しかし此れだけ主人公をヒーローとして扱うのは
如何なものかな?という疑問が
NATOのフランス人上官が”彼1人を救う為に和平が崩れ
又、何千人の兵士が死ぬ・・・”と反対した方が
実は正しいんじゃ無いかと私も思うんだが。
まあ、それでは物語に成らないし
此の結末の方が戦争アクション映画として
カタルシスが有る事は確かだ。
でも、此の映画を観て、格好いいから軍隊に入ろうなんて
馬鹿が居るんじゃないかとチト心配。
此の監督はジョン・ムーア
まだ若いが「トップ・ガン」のトニー・スコットの様な
シャープでダイナミックな演出力があり、先が楽しみ。
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