新日本風土記「廃墟」
此の番組は、いつも録画しているのだが
全部は、とても観れないのでブルーレイに落としたままだ。
昨日放映した「廃墟」はタイトルに興味が有ったので
珍しくリアルタイムで観た。
廃墟と云えば、その昔ヨーロッパの庭園に廃墟ブームが
有ったくらいだから人間には
何処かに滅び行くものを愛おしむ心が有るのかも知れない。
昨日の此れは「新日本風土記」だが
新しい日本を見せる訳ではなく、皮肉にも
新しい日本に置き去りにされた建物を幾つか紹介していた。
兵庫の山の上の”真耶観光ホテル”
長崎の沖に浮かぶ”軍艦島”
群馬のダムに沈む”川原湯温泉街”
香川の”小与島の石切り場跡”
宮城の”化女沼レジャー・ランド”
岩手の”松尾硫黄鉱山アパート”
何れも現状は凄まじいばかりの荒廃である。
それらを次々と、そこに住む人
かって住んでいた人達のインタビューを交えて構成していた。
私が感じたのは、それらの施設が
無機的な建造物と云えども、そこには命があり
心臓が止まる様に、その場の営みが途切れると
見事に腐り、崩れ、朽ちてしまう事。
そして残された廃墟に共通して漂う無常観は
正に仏教で云う”色即是空”の世界。
どんなに人々が集い隆盛を極めた遊園地であろうが
今は錆びて大きな鉄屑と成った観覧車に
人の世の空しさを感じさせる。
此のドキュメンタリーが優れているのは
廃墟だけを風景として見せるのではなく
それに関わった人達を登場させ、過去の栄光と
未だに捨てきれぬ夢を語らせている処だ。
彼等も流石に今は歳を重ね(70〜80歳位か)
それらの廃墟と同じ様に肉体も衰えている。
明らかに制作者が、それを意図したと思われるが
彼等の老いた裸身が残酷な現実として
廃墟の映像と重なる。
それでも彼等老人達は何故か妙に明るい。
自分を人生の敗者と全く認めていないのだ。
そこには敗戦後の日本から
何度かのオイル・ショックにバブル崩壊
そして今度の震災に打ちのめされながらも
”まだ勝負は終わっていねえぜ!”と這い上がって来た
我々日本人の親や兄弟たちの底力を見た様な気がする。
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